


私立の中高一貫校の「文化」を考える
各学校には、毅然とした「教育方針」がある
極論するならば、私たち親側から見ると、中学受験は「文化」を求めて行うものでもある、と言えます。
私立の中高一貫校には必ず「理念」というものがあり、一本芯の通った「教育方針」というものが根付いています。
「子どもたちが人として生きていくために、このような素養を身に付けさせたい」
「このような大人に育てたい」
などという確固たる信念のもと、各校オリジナルの、そこでしか得られない毅然とした「教育方針」を持って、預かった生徒たちを懸命に、また大切に指導していくのです。
私はそれをこのように感じています。
「表現方法は百校百色であるが、その溢れる源泉は同じである」と。
つまり、「人は一人では生きられない。他者への感謝を忘れず、社会に貢献せよ」ということを、表現方法を変えて明記しているのです。
人間というのは勝手な生き物で、「己の幸せ」を常に追い求めているようなところがあります。
しかし、この「己の幸せ」は、究極的に言えば「自分以外の誰かのために何かをする」ことでしか体感できない、ということなのかもしれません。
「幸せな人生を送るために、人の役に立つ人間になれ」という大いなる目標のために、私立の中高一貫校は次のように考えるわけです。
「しっかりとした学力を根幹にせよ」
「高い志を持て」
「経験せよ、失敗せよ、挫折せよ、そして学べ」
このような源泉から湧き出た思いは、各校独自の教育方針として掲げられ、時間をかけて「文化」として育っていきます。
それは、その学び舎でしか体感できない「文化」であり「経験」となっていきます。
人生で一番多感な時期に浴びるシャワー
私は長年、私立の中高一貫校の取材を続けているためか、不思議なことに、仕事上で出会う人の出身校がわかってしまうことが度々あります。
目の前に座っている人を見て、「この人、〇〇学園の匂いがするな」と思い、確認をすると、高確率で「実はそうなんです」と言われることが多々あるのです。
自由闊達で知られる学校出身者は根っこの部分でそれを大切にしている大人であるように思いますし、「他者のために奉仕する」という教育方針のもとで育つとそういう人になるのだなと実感したり、質実剛健をモットーとする学校を卒業した人は生涯そういう生き方を貫くのだな、と思ったりします。
12歳から18歳という、人生の中でも一番多感な時期に浴びる言葉や文化のシャワーというものは、人間の骨格を作って行くんだなぁとしみじみと思いますし、また、その根っこを見せられ、正直、羨ましくなります。
各校の校風の違いについて、分かりやすいたとえ話に、「もし、そこに空き缶が落ちていたら」というものがあります。
中学受験界では有名な話ですが、「女子御三家の桜蔭の生徒は参考書を見ているので空き缶に気付かず、雙葉の生徒は拾い上げてゴミ箱に入れ、そして女子学院の生徒は皆で缶蹴りを始める」というものです。
私が豊島岡学園に聞いてみたところ、「みんなで競って拾いに行く」とお答えになりましたし、逆に男子校の浅野学園の場合は「全員、無視(空き缶は人生にとっての大事ではない。男はここぞという時に動くもの)」とお答えになるなど、実に様々です。
良い・悪いではありません。
このように、大切にしているものが各々あるということです。
中学受験で親がわが子にできる最大のギフトとは
中高一貫校は、「四輪駆動」で動いていると言えます。
生徒と教師と保護者、そしてOB・OGという卒業生の力で動いているのです。
この4者が連綿と「襷」を受け継ぎながら、時代に合わせて走り続けているという解釈が成り立つでしょう。この集積が「文化」です。
そして、中学受験の良い所は、この各校で違う「文化」というものを選んで行けるということに他なりません。それは、とても贅沢なことです。
この、各校で違う「文化」を感じ、どの「文化」がわが家に合うのか。
そして、どの「恵み」を与えることが、わが子の人生の幸せに繋がって行くのかを真剣に考えることが、中学受験に際して親がわが子にできる最大のギフトなのです。
そのためには、直接、学校に出向き、そこに流れる空気を吸って来なくてはいけません。
「文化」は言葉にできない、「感じる」ものだからです。
わが子が、その学び舎に違和感なく立っているであろうと感じる場所こそが、「わが家に合う」学校です。
ぜひ、色々な学校を見て回り、各校オリジナルの文化に触れてみてください。
そこから、親は「わが家の教育方針」「わが子の適正」「わが子に本当に身に着けてもらいたい力」などを冷静に分析することができるでしょう。
ゆめゆめ、一度も学校説明会に参加したことがない学校に入学してしまうことになり、そこから情報収集に慌て出すということがないようにしましょう。
しっかりと時間をかけて「学校文化」と「わが家の譲れない価値観」、そして「わが子に合うか否か」を考え、感じることがとても重要なのです。
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