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PISAで好成績の日本! でも、喜んでばかりいられない5つの理由

PISAで好成績の日本! でも、喜んでばかりいられない5つの理由

親野智可等

2026年9月にPISA2025(OECD学習到達度調査)の結果が発表されました。これは各国の15歳(日本では高校1年生)の科学・読解力・数学の能力を測るテストです。

日本が3分野すべてにおいてOECD加盟国中のトップということで、メディアも沸き立ちました。今回新設されたデジタル分野(簡単なプログラミングなど、デジタル機器を使いながら自分で考えて学び、問題を解決する力)でも日本は1位でした。

ちなみに、OECD非加盟国・地域も含めると、日本は「読解力」が3位、「数学リテラシー」が5位、「科学リテラシー」が2位です。

とはいえ、OECDの中で日本がトップと聞けば、誰しもうれしい気持ちになります。でも、少し立ち止まって考えてみるといろいろな疑問や課題も見えてきます。

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1.モノサシ(評価項目)が妥当か?

学習到達度(学力)として何を測るかという根本的な問題があります。
出題のモノサシが変われば順位は激変します。実施しているのはOECD(経済協力開発機構)であり、「労働力としてグローバル経済に適応できるスキル」という経済的な視点が土台にあります。でも、生きていく上で必要な学力を経済的視点だけで考えていいのでしょうか?

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2.PISAは学力のほんの一面しかとらえていないのでは?

下記の内容も大事な学力のはずですが、PISAでは対象外になっています(そもそも測れない)。

  • ゼロからイチを生み出す課題設定力。
  • 独創的なアイデアで新しい価値を生み出す創造力。
  • すぐに白黒つけずに考え続け、曖昧さに耐える力。
  • 試行錯誤しながら根気よく追究しつづける力。
  • 対人コミュニケーション力を駆使してリアルな情報を得ることで解決につなげる取材力。

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3.「日本の教育予算や先生の数は今のままで大丈夫」といっていいのか?

PISAでの好成績について、日本の学校の先生たちの努力をたたえたいという声もあります。つまり、公的教育にかける予算がOECD加盟国で最低水準の日本において、1人の先生が受け持つ子どもの数も圧倒的に多い日本において、こうした結果を出しているのは先生たちの努力の賜物だという声です。

もちろん、日本の先生たちは数々の悪条件の中で毎日本当によくがんばっていて、私もそれに異論はありません。

ただし、「このように好成績が出せているのだから、教育予算を増やして先生の数を増やして少人数学級にする必要はない」という理屈に誘導する人たちがいるから困るのです。

この理屈は大事な点を見落としています。実は、日本の子どもたちの学力がキープされているのは塾や通信教材の貢献による部分も少なくないのです。そして、その費用負担はすべて家庭です。

ですから、家庭の経済格差がもろに子どもたちに影響を与えています。それは本来あるべき姿ではありません。

本来は公教育ですべての子どもの学力を保障すべきであり、家庭の経済格差の影響は極力少なくしていく方向に進めなければならないはずです。

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4.この能力を企業も含めて日本社会が活かしているか?

日本の子どもたちは学校や塾や通信教材などで勉強しています。家庭教師をつけて勉強している子もいます。それらを合計した勉強時間はかなり長いものであり、子どもの精神的負担も大きいです。

そのような子ども時代を過ごして大人になった人たちが今の日本社会で働いているわけですが、その日本の賃金は何十年にもわたって低いままです。GDPの成長面でも他の先進国に後れを取っています。

つまり、PISAでよい成績を取ってきた若者たちを、企業も社会も活かしきれていないということになります。若者の斬新なアイデアや挑戦に蓋をしたり、旧態依然なシステムの中で埋もれさせたりしている部分も多いのではないでしょうか?

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5.PISAで好成績なのに日本の1人当たりのGDPが低いのはなぜ?

日本のGDPは世界4位ですが、1人当たりのGDPは残念なほど低くてOECD加盟国(38カ国)の中で最低の24位です(2024年)。G7の中では最下位の7位です。

日本の1人当たりのGDPが低い理由はいくつかありますが、一つの理由は斬新なアイデアで新規起業する人が少ないからです。つまり、スタートアップやユニコーン企業が少ないのです。

その理由の一つが、子どものころ「遊びや趣味も含めて、自分がやりたいことを自分で見つけてどんどんやる」という真に主体的な時間を十分に持てていないことです。

反対に、親や先生から「やらされること」が多いのが日本の子どもたちの実態です。

日本以外のG7各国は夏休みが2カ月もあり、宿題は全くありません。子どもたちは様々なアクティビティ・自然の中での遊び・体験活動・趣味・読書などに精を出します。普段の生活でも日本ほど多くの宿題が出る国はありません。

そうした時間の中で、「自分がやりたいことを自分で見つけてどんどんやる」時間が持てて、主体的な自己実現力やその他の非認知能力が育ちます。それが新規企業にも繋がっているのです。

また、子どものころに非認知能力を伸ばすことが学力の後伸びにつながることも多くの研究で判明しています。

「勉強! 勉強!」「宿題! 宿題!」と大人から言われて受動的にやる勉強では、こういう自己実現力や非認知能力は伸びないのです。

先進各国では、子ども時代に夏休みを謳歌しまくり、大人になってからも2カ月のバカンスをエンジョイし、しかも仕事の生産性も高く1人当たりのGDPも高い……。ひるがえって日本は?

こうしたことがもっと真剣に議論されて然るべきではないでしょうか?

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著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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