夢の志望校合格への
教育資金シミュレーション
第2回 教育に使える助成金と制度
少子高齢化が進む中、国や自治体、各種公的団体による子育て支援は、年々充実したものとなってきています。今回ご紹介する助成制度だけでも、最大限に支援を受けられる方なら大学卒業までの22年間で2千万円以上、最も助成の対象となりづらい方でも数百万円もの助成額になります。
すべての方がすべての制度を利用できるわけではないでしょうが、後になってから「もらっておけばよかった!」とならないように、主要な制度についてひと通りおさえておきましょう。
※本記事は2020年4月現在の情報にもとづいたものです。
子育て世帯全般の生活支援制度
【児童手当】
中学校卒業までの児童を養育している保護者に対して支給される最も基本的な手当です。子ども1人あたり3歳未満:月額15,000円、3歳~小学校卒業まで:月額10,000円(第3子以降は月額15,000円)、中学生:月額10,000円が、年3回に分けて支給されます。
≫ 参考リンク:内閣府「児童手当制度のご案内」
https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html
【児童扶養手当】
主にひとり親家庭等を対象としたもので、所得や児童数により制限がありますが、該当家庭には最大で子ども1人あたり月額43,160円が支給されます。
≫ 参考リンク:東京都福祉保健局「児童扶養手当」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/kodomo/kosodate/teate/zidoufuyouteate.html
【医療助成制度】
日本の公的医療保険(健康保険)では、子どもの医療費の自己負担割合は小学校入学前なら2割、小学校入学以降は3割となっています。しかし、2020年現在、すべての都道府県・市区町村で独自の小児医療保障制度が設けられており、実費負担が軽減されています。
≫ 参考リンク1:東京都福祉保健局「乳幼児医療費助成制度」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/josei/marunyu.html
≫ 参考リンク2:東京都福祉保健局「義務教育就学児医療費の助成」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/josei/maruko.html
【子育て支援パスポート】
18歳未満の子どもがいる世帯に対して、各種の割引・優待サービスや乳幼児連れの外出支援・応援サービス等を提供する制度です。各自治体に申請・登録するとパスポートが発行され、それを協賛店舗や企業などで提示すると、割引をはじめとした各種のサービスが受けられます。どの自治体で登録しても全国で利用できます。
≫ 参考リンク:東京都福祉保健局「義務教育就学児医療費の助成」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/josei/maruko.html
【共済組合等の祝金】
共済組合、労働組合、町内会等の互助的団体で、出産・進学時に数千円~数万円程度の祝金制度を設けているケースがあります。こまめに会報誌、ホームページ等をチェックしておきましょう。
学校等への就学・通学に対する支援制度
【幼児教育・保育】
令和元年10月以降、3~5歳の児童については、認可保育所・認定こども園は無償、幼稚園は1人あたり月額上限25,700円まで助成されるようになっています。
認可外保育施設でも保育が必要と認められた児童については1人あたり月額条件37,500円まで助成されます。0~2歳児についても住民税非課税世帯については助成制度が設けられています。
また、各施設における副食(おやつ等)の費用についても、第三子以降の子どもや、年収360万円未満世帯の子どもについては免除となります。
この他、自治体ごとの助成制度が、全国的に実施されています。
≫参考リンク1:内閣府 幼児教育・保育の無償化概要
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/musyouka/gaiyou.html
≫参考リンク2:内閣府 「幼児教育・保育の無償化はじまります」
https://www.youhomushouka.go.jp/
【義務教育(小学校・中学校)】
義務教育では、それほど大きな助成制度が無いのが実際のところですが、日本国憲法第26条2項にもとづき、公立校の授業料は無条件に無償となっています。また、私立校の場合は世帯年収約400万円未満の家庭については最大で年間10万円の支援が受けられる実証事業が行われています(実施期間:平成29年度~令和3年度)。
授業料以外の部分については、教科書代は公立・私立を問わず、すべての児童・生徒について無償となっています。また、学用品代、学校給食費、修学旅行費などの費用についても、就学困難な世帯に対しては多くの自治体で就学援助制度を設けています。
【高等学校】
「高等学校等就学支援金制度」にもとづき、国公立の高校では保護者の年間課税所得が910万円未満の場合には授業料が実質無償となっています。
私立高校の場合には、令和2年度より、保護者の年間課税所得が910万円未満の場合には年118,800円(公立高校の年間授業料相当額)が支援されます。うち、年間課税所得が590万円未満の場合には、上限額が年396,000円に引き上げられます。
≫参考リンク:文部科学省「高等学校等就学支援金制度」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm
都道府県によっては、年間課税所得が590万円以上910万円未満の家庭に対しても私立高校の平均授業料水準に達する額までの追加支援を行っている場合があります。また、年間課税所得が910万円以上でも扶養する子どもの数が多ければ一定額を支援する自治体もあります。
≫参考リンク:東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」
http://www.shigaku-tokyo.or.jp/pa_jugyoryo.html
授業料以外の費用(教科書代、学用品代など)については、住民税非課税世帯などに限定されますが、公立・私立を問わず高校生のいる世帯に対して各自治体が助成する「高校生等奨学給付金」等があります。
≫参考リンク:文部科学省「高校生等奨学給付金」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1344089.htm
【大学・大学院】
国公立大学では経済的事情のある学生を対象とした入学金・授業料の減免措置が設定されています。私立大学でも一定の減免制度を設けている場合が多いです。
≫参考リンク:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm
【その他:特待制度・奨学金制度・教育ローン・生前贈与の特例等】
その他、必ず受給できるとは限らないため、資金計画とは別途のものとして考えなければいけませんが、私立校を中心に成績優秀者等に行われている独自の特待制度や、東京都等で行われている「受験生チャレンジ支援貸付事業」のように審査通過/志望校合格により給付金のように使える制度もあります。
また、負債となるものですが、自治体や独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)等の公的機関が行っている奨学金・育英資金制度の他、一般的な借り入れに対して利率を抑えた政策金融公庫等の「教育ローン」をはじめ、資金の借り入れを援助する形での教育支援があります。
助成金とは性質が異なりますが、30歳未満の子や孫へ1人あたり1,500万円未満の生前贈与を一括でした場合、学習資金を目的とした贈与であれば相続税がかからない制度、いわゆる「教育資金贈与の非課税特例」なども、教育資金の設計ではよく使われています。
※奨学金制度や教育ローン、各種の税制特例については、また別の回で詳しくご紹介する予定です。
助成制度の利用を考える際の3つのポイント
以上、教育に使える主な助成制度についてご紹介してきました。これらの利用を念頭に、将来に向けた学習資金の設計・運用をするにあたっては、次の3つのポイントに留意しておくとよいでしょう。
1.自分で申告する必要がある/さかのぼって請求することができない
助成制度の多くは、本人が申請をしなければ受給することができない/さかのぼって請求することができません。
また、助成制度の多くは、申請にあたって取り寄せなければならない書類が複数に及びます。日頃から各種の助成制度について下調べをしておくとともに、申込期限をスケジュール帳につけておくなど、申請漏れを起こさないように気をつけましょう。
2.最新かつ正確な情報を得ることが重要
助成金の金額や、受給要件、申請内容、申込期日等は、年によって変わる場合がありますので、必ず最新かつ正確な情報を得てから動くようにしましょう。
子育てに関する助成制度の多くは各市区町村が窓口になっています。市区町村独自の助成制度も多く、市区町村の子育て支援の担当者には助成制度に関する情報が集まりますので、身近な相談先としてベストな存在といえるでしょう。
3.長期の資金設計においてはなるべく不確定要素としておく
助成制度は本質的にはセーフティネットとしての側面が強いものです。親の収入・資産が増えると対象外となるものが多いですし、制度自体が社会情勢次第で改廃される場合もあります。
少子高齢化に伴い助成制度は年々手厚くなる傾向にありますが、20年前の状況に鑑みると20年先の状況を予想することが難しいのも事実です。長期の教育資金の設計をする上では、助成分を除いて考え、受給できることがはっきりした時点でその分を加算していく方が安全です。
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いかがでしたでしょうか? 主に国が定めた助成制度を中心にご紹介してきましたが、各自治体独自のものや、民間のもの、教育を主目的としていないものも含めると、使える制度はより多岐に及びます。各種の助成制度に目を光らせ、うまく活用してください。
また、最後にお話したように、教育資金を確実に確保するためには、不確定要素を少しでも取り除いた設計と運用が大切です。そのあたりを念頭に、次回は、教育資金を計画的に貯める・増やす・使うポイントについて、整理してみたいと思います。
今回のおさらい
- 助成金をもらうのと、まったくもらわないのとでは、大学卒業までの22年間で数百万円以上の差が出てくる
- あまりに先の助成金を教育資金の基本設計に組み込むことはリスクがともなう
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