昭和大学
基本情報
試験時間:2科目140分/問題数:大問4題
分析担当
勝亦 征太郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 窒素の循環
(窒素同化、窒素固定、硝化)
記述式、選択式 標準
2 免疫
(自己に対する免疫寛容、リンパ球の分化と拒絶反応、骨髄移植)
記述式、選択式 標準
3 肝臓
(構造、機能、はたらき)
記述式、選択式 標準
4 進化のしくみ
(自然選択、遺伝的浮動、分子進化、分子系統樹)
記述式 標準

問題分析

  1. 窒素の循環に関する問題。問1~3までは基本的な知識の穴埋め問題および選択問題なので完答したい。問4では化学エネルギーの観点から窒素循環を判断する問題で、問題集などではめったに見ないタイプ。しかし教科書では同化の単元の導入で酸化・還元について丁寧に説明されており、しっかり読み込んで正しい解釈の下で学習を進めてきたかが問われていた。問5の計算問題は演習問題を重ねていれば必ず出会う問題。差が付いたのは問6の記述問題だろう。同化について植物の話は頻出であるが、我々動物における同化についても医学部受験ならばしっかり押さえておきたいところ。この大問を完答した受験生は少なくないだろう。
  2. 免疫に関する問題。問3や問6の皮膚移植の生着に関する問題では、MHCの対立遺伝子はどのように発現し自己非自己判定がなされるのか、そして骨髄移植をすることで自己の認識がどのように変わるのかが問われていた。医学部受験では頻出といえる内容で、取りこぼしたくないところ。問4と問5の記述問題は字数制限がなく問われ方もシンプルだが、それゆえに記述式の答案作成に対する技術や経験も評価しやすい問題。全体として力の差が分かりやすく出る大問で、準備次第で十分に完答が狙えるだろう。
  3. 肝臓に関する問題。問1から問4までと問6は完答したい。問5はタンパク質が呼吸基質として利用される際に、脱アミノ反応によって生じるアンモニアに関する話と気付くところがポイント。肝硬変になっている人はそのアンモニアが肝臓で弱毒化されず、血液中に残るアンモニアが増えて脳に到達し、さまざまな神経症状を引き起こすことが知られている。問7の(2)は細かい反応まで問われており、反応を覚えていて記述できた受験生はわずかだろう。「おしりあるき尿素(オルニチン→シトルリン→アルギニン→尿素生成)」というゴロなどで何とか覚えていた分を記述できれば上々だろう。
  4. 進化のしくみに関する問題。その場で問題文を読んで対応する形では正答が難しく、事前に現象理解を深めた上で演習経験を積んだ受験生だけが正答できる問題となっていた。テーマは生物進化のしくみである自然選択と遺伝的浮動についてであり、背景にある分子進化の考え方を導入にしながら、用語や現象に対して正しい理解がなされているかが問われていた。問1から問3までは完答したい。問4から問6はこれまでにこのようなテーマに接し、指導者と考え方を相互交換しながら理解を高め、記述演習を重ねていれば正答できただろう。問7は大きなひねりもなく正答したい。

総評

 大問の数は昨年度と同様の4題。すべての大問で、基本~標準レベルの知識を用いた用語の穴埋め問題や論述問題が大半を占めていた。例年実施されていた描画問題は出題されず、計算問題も昨年同様シンプルなものが1問のみ。論述問題に字数制限があったのは30字の問題が1つだけで、他の問題には字数指定がなく「簡単に答えなさい」といった形式だった。問われ方はシンプルでありながら、問題の意図を確実に把握し、学習してきた内容と問題文に記載された内容を用いて正答に到達する能力が求められていた。教科書を丹念に読み込むことで知識を定着させ、教科書傍用問題集などでの反復演習を通じて知識の活用方法を身につけ、解いた範囲の内容を資料集で確認するといった地道な努力を経ることで高得点~満点まで期待できる問題である。継続的に丁寧かつ誠実に学ぶ学生を選抜したい、という大学側の思いが感じられる良問であった。