試験時間:2科目140分/問題数:大問2題
首藤 卓哉
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
一 | 加藤尚武 『技術と人間の倫理』 |
漢字(書き)、 選択式、記述式 |
標準 |
二 | イマニュエル・ウォーラーステイン著 山下範久監訳 滝口良・山下範久訳 『知の不確実性―「史的社会科学」への誘い』 |
漢字(書き)、 選択式、記述式 |
標準 |
問題分析
- 設問は全部で14問あり、昨年よりも2問減った。出典ジャンルは例年と同様に哲学系の内容であった。文章の内容は非常に平易であり分量自体も昨年より750字(20行)程度減った。記述問題は昨年と同数の3問であったが、指定字数は30字以内が1問、40字以内が2問と昨年よりも大幅に減少し易化したと言えよう。なお、漢字については、昨年は読みの問題があったものの、本年は書き5問となった。
- 設問は全部で10問あり、昨年よりも2問減った。記述問題の出題方式は例年と同様で、字数制限ではなく指定の行数(2~4行)以内で記述する方式である。問題数は5問で昨年と同数。ただし、昨年には無かった漢字の書き取り問題が10問追加された。文章のジャンルは昨年と同様で医療に関するテーマであったが分量は1ページ分増加した。
総評
昨年まで3年連続で大問が減り、本年は大問数こそ昨年と同様の2題なものの、設問数が24問(昨年は28問)で減少傾向が続いた。小問の内容も漢字の書き取り問題は増えたものの、大問一の記述問題の指定字数が昨年の累計最大210字に比べ、本年は累計最大110字と約半分になった。ただし、大問二の記述問題に関しては昨年の指定行数が累計最大9行であったのに対して、本年は累計最大15行と増えている。よって記述の量としては全体のバランスを考慮するとさほどの増減はないと言えよう。以下、各大問の内容について触れる。
大問一は約4000字の論説文で、アイルランドの作家ジョナサン・スウィフトの作品『ガリヴァー旅行記』を挙げて、前半の内容は「ものの見方というのは常に相対的であり、絶対的な基準はない」というありふれたテーマについて論じている。後半はスウィフト自身の考えについて具体的に論じており、内容もさほど難しいものではない。よって前年と比較すると易化したと言ってよいであろう。
大問二は約5200字の論説文である。一昨年が3000字、昨年が4000字であり、分量が大幅に増加している。内容は「医学的無益性」をテーマにし、簡潔に述べると「医療は患者自己決定権を尊重しなければならないが、そこには医療が患者に及ぼす効果と利益性を考慮しなければならない」というもので、実際に起きた「ベビーK事件」を例に挙げてそれを論じている。本学では毎年、このような医療に関するテーマの論説文が出題されており、日ごろから医系テーマに関する知識を涵養しておくことが肝要である。本年の問題でも「パターナリズム」「ヒポクラテス」など医学部小論文に頻出の用語や人物名が登場しており、これらの知識は読解や解答を考える上で非常に重要なものである。
また、昨年の総評でも触れたことであるが、本学の小論文は「医系テーマ」「哲学系テーマ」「社会系テーマ」の3種に大別することができ、特に「医系テーマ」「哲学系テーマ」は、この国語の入試問題を読む際に必要な知識であるので、それぞれを練習しておけば国語と小論文を相互補完的に学習することができる。
入試科目に国語が設定されてから大問の構成が毎年変更されてきたが、本年は昨年と同様の2題であった。ここに於いて問題形式は定まってきたようにも思われるが、分量や漢字の出題、記述の量などは、まだそうとは言い切れない部分も多々ある。難易度自体も落ち着いてきていると感じられるので、国語での受験を選択肢に入れることを考慮しても良いであろう。