昭和大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて140分/問題数:大問4題
分析担当
深石 真行

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 糖類の総合問題 記述式 標準
2 エステルの合成実験、
芳香族エステルの推定
記述式 標準
3 油脂の構造推定 記述式 標準
4 小問集合 記述式 やや易

問題分析

  1. 今年度の大問1は、例年のように未知の知見に関して問うような出題ではなく、糖類に関する標準的な入試問題であった。問2(1)フェーリング液の反応についての化学反応式は、教科書には登場しているが、入試問題で問われる機会は少なく、差がついたであろう。問2(3)(イ)の二糖類の名称は、教科書に登場していない物質であり答えられなかった受験生は多かったと思われる。アミロペクチンの推定問題は標準的な出題で、やや計算は煩雑であるが、しっかりと問題集等で対策してきた受験生はそれほど苦戦しなかったと予想される。
  2. エステルの合成実験と構造推定に関する問題である。塩化カルシウムをアルコールの除去に使うという知識は、ほとんどの受験生は知らない知識であるが、本文の流れと選択肢から考えればその解答は概ね予想がついたと思われる。エステル化の反応速度についての出題も多くの受験生が知らない知識であったと考えられるが、順番のみが問われている出題だったので、予想はつきやすかったのではないだろうか。エステルの構造推定の問題は、(4)、(5)の推定において有機酸の強さに関する知識が必要で戸惑った受験生が多かったと予想される。
  3. 油脂の構造推定に関する問題である。ヨウ素化やけん化の反応を利用して、構成する脂肪酸の不飽和度や分子量を決定するという極めてシンプルな出題である。計算はやや煩雑であるが、油脂の計算問題は概ね似たような計算が多いので、しっかりと問題集等で対策してきた受験生はそれほど苦戦しなかったと予想される。また、油脂の計算は、ステアリン酸やパルミチン酸の分子量を覚えているかで解答速度に差がつきやすい。本学の合格を狙うような受験生であれば、必須の知識と考えるべきであろう。
  4. ここ数年、大問3か大問4に計算問題の小問集合が出題されており、今年度もその傾向は継続された。年度によって異なるが今年は6題であった。難易度はどれも入試問題集によく登場するような内容である。本学の合格を狙う受験生であれば解法が思い浮かばないということはないだろうが、煩雑な計算であり、時間はかかる。ただし、例年、前期も後期も同じような内容であり、しっかりと過去問対策をしてきた受験生は対応できたと思われる。

総評

 例年、大問1・2では高校の教科書に載ってないような生化学の知見に関する内容をテーマとした、文章読解力と思考力を問う問題が出題されていたが、今年度はそのような問題が出題されなかった。大問1は糖類、大問2はエステル、大問3は油脂がテーマとして出題されており、いずれも有機化学に関連した問題である。例年、有機化学に偏った出題をする本学であるが、今年度もその傾向がより顕著な傾向として現れていた。ただし、今年度は知識より計算に比重を置いた問題が多く、そのあたりで知識と計算のバランスを取ったと予想される。内容としては標準的な問題集に載っているような問題が多く、例年のように知らないと解けないような問題はほとんど出題されなかった。このことから、いかに早く題意を読み取り、問題を処理できたかがポイントとなったと考えられる。大問4は、ここ数年の傾向通り計算問題の小問集合であった。
 全般的に今年度は計算の分量が多かったため、大問4題を最後まで解き切れたかで得点差がついたと予想される。標準的な問題に対して素早く解法が思い浮かぶように、過去問や問題集等を精力的に解いてきたかどうかが反映されやすい入試であったと予想される。