
さきよみ中学受験

国内外の大学進学に使える「IB教育」とは
学び方は国際基準。「探究型学習」をさきどり
国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、スイス・ジュネーブに本部を置く「国際バカロレア機構」が1968年から提供する国際的な教育プログラムです。
「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を目的としています。
国際バカロレア機構は、世界共通のIBのカリキュラムの作成や、最終試験であるIB試験、国際的に通用する大学入学資格の授与を実施しています。
現在、世界で5000以上の学校が「認定」を受けており、日本国内では38校(学校教育法に定められた学校)が認定校としてIB教育を実施しています。
IBのプログラムは生徒の年齢に応じて、次の4つに分かれます。
日本の小学校に相当する3~12歳を対象としたプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP:Primary Years Programme)、中学校相当の11~16歳を対象とするミドル・イヤーズ・プログラム(MYP:Middle Years Programme)、高校に相当する16~19歳までを対象とするディプロマ・プログラム(DP:Diploma Programme)、16~19歳を対象に職業教育に関連したプログラムを実施するキャリア・リレーティッド・プログラム(IBCP:Career-related Programme)です。このうち、国内にはPYP、MYP、DPの認定校があります。
世界標準の思考力を身につけ、国内大学進学の道も
IB教育が注目されるのには、いくつかの理由があります。
まず1つは、世界標準の教育プログラムであることです。
どの教科でも知識を「覚える」ために学ぶのではなく、児童・生徒を中心に据え、議論や発表を多用します。
自分たちで活動を組み立て、失敗も含めて経験を通して「学びを深める」ことを重視するのです。
これは、新しい学習指導要領でうたわれている「探究型学習」に近いこともあり、これから日本が目指す学校教育をさきどりするプログラムとして注目を集めています。
MYPで設けられている「言語と文学」「言語の習得」「個人と社会」「理科」「数学」「芸術」「保健体育」「デザイン」の8教科は、日本の中学校の科目と似ていますが、各教科にまたがった学びや、実社会との関連性を持たせながらの学びが特徴です。
高校段階のDPプログラムは、「言語と文学」「理科」などの6つの教科群があり、6科目を2年間で学びます。
さらに個人研究をまとめる「課題論文」、批判的思考を培うための「知の理論」と呼ばれる100時間の学習、自発的な体験学習「創造性・活動・奉仕」といったIB特有の学びも加わります。
日本の学校教育法に定められた小中高校では、IBの科目を日本の学習指導要領にのっとった科目に読み替えて実施します。
高校3年の秋に全世界で実施される最終試験の成績と、これまでの学習の評価を合わせて45点満点中、原則24点以上を取得すれば国際バカロレア(IB)資格が授与され、海外大学への進学の道が開けてきます。
海外の大学では受験資格や入学資格として認められており、留学準備期間を置かなくても進学できるメリットがあります。
近年は、国内でも、国際バカロレア資格を出願時に活用できる「IB入試」を実施する大学が、国公立・私立とも増えています。
IBプログラムで学んだ生徒は、批判的な思考力やプレゼンテーション力などが高くAO入試に強いと言われます。
今後は日本の大学進学にも使える学び方として、ますます注目が高まりそうです。
高い英語力は一生の武器に
IB教育が注目される2つめの理由は、高い英語運用能力が身につくことでしょう。
特に、高校段階のDPは、一部の「日本語DP」の科目を除き、英語、フランス語、またはスペイン語で実施されます。
日本の多くのIB校は英語を用いているため、高校卒業段階の内容を英語で学ぶことができます。
海外大学進学を前提にしたカリキュラムが組まれているので当然といえば当然ですが、将来を海外で、と考える高校生にはハードながらも、英語で思考力を高めたり、議論したり、論文を書くといった実践力を身につけられるプログラムなのです。
もちろん、国内大学を選んだとしても、高い英語力を生かせれば、学業だけでなく就職にも断然有利となります。
公立中高一貫校への広がり
IBは、日本に導入された当初、インターナショナルスクールや私立学校、国立大学の附属校を中心に取り組まれてきました。
私立学校では仙台育英学園高校や玉川学園中学部・高等部、加藤学園暁秀中学校・高校などが早くからIB教育を導入している老舗として知られています。
さらに、公立の中高一貫校にも導入する動きが出てきました。
地域性や保護者の経済状況にかかわらず、より多くの子どもがIB教育を受けられる機会を提供する狙いがあります。
学費を公立並みに抑えたままIB教育が受けられるのは、保護者にとって大きな魅力です。
札幌市立札幌開成中等教育学校は、2017年にIB校に認定され、すでにMYPとDPが始まっています。
首都圏では、さいたま市立大宮国際中等教育学校が認定をめざしています。大阪市立水都国際中学校・高校は2020年度、高校2年に「国際バカロレアコース」を設置してIB教育を開始する予定です。宮城県立の仙台二華中学校・高校も2021年4月の開始をめざしています。
公立中高一貫校の新たな魅力づくりのひとつとして動向が注目されます。
認定校の増加に伴い、IB教育に関心を持つ家庭も多くなっています。
文部科学省はIB教育の普及啓発や導入校への支援をするため、「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」を設立し、情報提供を始めています。
IBで学べる学校の情報も掲載されていますので、おすすめです。
しかし、IB教育を導入している「IB校」とひと口に言っても、MYP、DPのプログラムの設置の仕方は学校ごとに異なります。
高校でDPはあるが中学ではまだというケースや、MYPは中学全校で実施しているが、高校のDPは一部のコースとして行っているなど、学校ごとに違いが見られます。
個別の学校のウェブサイトを確認するなどして、幅広く情報収集することが必要です。
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