おかあさんの参考書
中学入学前の準備について考える

中学入学前の準備について考える

鳥居りんこ

今年度の中学受験を終了されたお母さん方、お疲れ様でした。想像以上の緊張を感じられたのではないかと思いますし、それこそ、ジェットコースターに乗っているかのような心の揺れを感じた方も少なくないかとお察しいたします。

2月1日からの1週間の記憶が鮮明ではないとおっしゃるお母さんも実際におられますが、それだけ一生懸命だったということの裏返しなのかもしれません。
入試初日、校舎に吸い込まれていくかのように映ったお子さんの背中を、母はこの先、何年経とうが鮮明に思い出すことになるでしょう。中学受験は母にとっては子育ての甘美な思い出の1ページなのです。懸命にお子さんに伴走してきた日々があるということは、実は母にとってはとても幸せなことだと思います。

とにもかくにも、お子さんは「一生に一度」の中学受験を経験し、精神的には一回りも二回りも大きく成長されたのではないでしょうか。受験本番、誰の助けも得られない中で、己の体一つで大勝負に立ち向かったという事実は結果の如何にかかわらず、お子さんの一生の財産になっているはずです。
このことは親子で誇っていいのではないかと思います。今すぐでなくても構いませんが、折を見て、お子さんには「よく頑張った。偉かった!」と伝え、そして、頑張ったご自分のことも忘れずに誉めてあげてください。

お母さんは少しの間、ボーッと過ごそう

さて、入試本番の激動の数日間を過ごされたご家庭ですが、そこからひと月が過ぎようかという今頃は「塾に行かせる時間だわ!」とか「プリント整理をやらなくちゃ!」「今日の塾のお弁当、何にしよう?」などと瞬間的に考えてはすぐに「もう、やらなくてよかったんだった……」と苦笑いしている母も多いことと思います。

何年にもわたって、こういう生活をしてきたのですから、急に「何もしなくていい」という暮らしに戻ると「変な感じ」になるのも無理はないです。
子どもに至っては“失われた小学生時代”を取り戻すが如く、遊びに余念がないのが普通ですが、母は年齢を重ねているせいか、なかなか元の暮らしに順応できないというのもよくある話です。

中学受験終了直後の母たちは、いくつかのステップを経て、中学生の母になっていきますが、まずは上記に挙げたように「家族でお互いの健闘を称え合う」ことをし、さらに母は少しの間だけ「ボーッとする」、何も考えない自由を味わう暮らしをしてみてください。
多くの母たちを見てきて思いますが、そのほうが新たな門出を楽しみに待つという気持ちが湧きやすくなるように感じています。

区切りとしては、中学校の制服が届くまでに。徐々に気持ちを新たな環境に向かって整えていくというイメージです。

学習習慣は崩さないのがポイント

3月に入ると中学校から召集がかかることも多いですし、中学によっては入学前から宿題やレポートといった課題が出される場合もあります。

ようやく過酷な受験勉強から解放された親子に水を差すようで恐縮ですが、学校は勉強するところ。特に中高一貫校のカリキュラムは進度が速いのが特徴ですし、公立中学であれば高校受験は必須。中学受験が終われば万々歳ではなく、実は中学入学からが本当の意味での勉学を深めるスタートだという事実があります。

そのためには、学習習慣を崩さないこと。もちろん、中学受験直前期のような勉強時間は必要ありませんが、1日の中でメリハリを持って学習時間を確保するのは、その後の中学校生活を考えると、かなり大事なことです。いきなり勉強時間をゼロにするのではなく、この時間は机に向かうというようにして、せっかく根付いた学習習慣を絶やさないことをお勧めします。

中でも、英語学習は大事。英語受験をした、あるいは英語学習は受験勉強とは別にやってきたという人は別ですが、小学校で英語授業が必修となったにしても、中学から始まるそれとは難易度は比べ物になりません。
中学校側の「真っさらな状態で来て大丈夫」という言葉を鵜呑みにすると、子どもが本当に苦労してしまうので、やはり基礎的な事柄(アルファベットが書ける、簡単な会話の読み書きができるなど)は入学前に予習していたほうが、お子さんの自信につながりますし、学校生活がスムースに回る遠因にもなるでしょう。

塾に行く、英会話教室に行く、オンライン学習をする、英検を目指すなど、そのやり方は様々あるので、ご家庭の都合がよいやり方で構いませんが、お子さんの意見を取り入れながら、英語を学ぶことが楽しみになるようなやり方で学習を進めてみてください。

そして、教科書が配布されたら、親子で「こんな面白いことを学習するんだね」とページをめくりながら、4月からの新しい日々を楽しみにしてほしいです。
もちろん、学習だけではなく、どんな部活動をやりたいか、委員会活動には何があるのかなどといったことにも思いを馳せ、親子でワクワクしながら過ごしてください。

余談ですが、いわゆるPTA活動以外にも「保護者のクラブ活動」がある学校も数多くあります。例えば、合唱、フラワーアレンジメント、園芸、聖書研究会、親父の会などなどですが、わが子以上に学園生活をエンジョイしているという親御さんは多いので、もし、そのような活動がある学校でしたら、入部を検討してもいいかもしれません。

さあ、お子さんはもうすぐ中学生。お母さんも中学生の母です。明るい未来が待っていることでしょう。楽しい3年間でありますことを祈っています。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

Youtube:鳥居りんこちゃんねる


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