おかあさんの参考書
ママ友との付き合いを考える

ママ友との付き合いを考える

鳥居りんこ

中学受験生のママたちから寄せられるご相談に「ママ友」があります。
ネットでも“公園デビュー”にはじまり、何かと「ママ友問題」が語られるご時世。子どもを介したお付き合いになる「子どもの友人・知人のママ同士」という、文字にしても“ややこしい”関係ですので、戸惑いを感じるママたちは多いでしょう。

もちろん、現在進行形でやっている子育ての悩みを相談できたり、日々のちょっとした愚痴を言い合えたり、子どもを預かったり、預けたりで、ママ友も心強い存在であるのは事実。
日本の子育ては時に過酷で、“孤育て”とも言われるほど、ママに比重がかかる場合が多すぎるので、「いなくてもいいけど、いると実際、助かることも多いよね」と証言なさる人も少なくないです。

かく言う私自身もママ友に助けられてきた歴史を持つので、その恩義もメリットも十分に分かった上で、あえて言います。

「中学受験にママ友、いらん!」
私は、中学受験に関してだけですが、ママ友は「百害あって一利なし」派です。

厳しい受験競争の現実

多くの中学受験生は塾に通います。勉強の場ですが、そこには同じ目的を持った大勢の仲間たちがいて、互いに切磋琢磨できるような環境が用意されています。

「アイツにだけは負けたくない!」
「あの子が頑張っているんだから、私も頑張る!」
というような、良い意味でのライバル関係を育む場合も沢山ありますし、休み時間などは特に、夜も週末も同世代とワチャワチャできる空間ですので、「友だちに会えるから楽しい!」と塾に通う子たちもいっぱいいます。

これはこれで、とても良いことですが、現実問題としては、そこは受験のための塾。受験勉強は順調に進むことのほうが少ないですし、成績は伸びずに、“うなぎ下がり”。「ずっと、スランプ!」と慌てているご家庭のほうが実際、多いです。

しかも、受験日は一斉で、定員もある。当然ですが、当日の出来が良かった子順に合格の扉が開きます。その塾のクラスの子全員が第1志望校に合格するわけではないことは自明の理なのですが、私のもとには2月の第1週に「あの子よりもウチの子のほうが断然、性格がいいんですよ! それなのに、ウチが落ちて、あの子が受かるなんてあり得ません!」というようなメールが山ほど来ます。

お気持ちは痛いほどわかるので、同情は禁じ得ませんが、そもそも、受験は厳しいことに「お手手つないで青信号を渡りましょう」という類のものではないのです。

探り、他の子との比較は何より危険!

これからの時期、小6生は入試直前期に突入しますが、動揺したり、どんどん不安になったり、ピリピリとした態度が表に出たりするのは、意外にも受験生ではなくママたちのほうです。

人によっては、「隣の芝生」が今、どうなっているのかが気になって仕方ない人も出てきます。どこを受けるのか、今現在、どの位置にいるのか、どういう勉強法をしているのか、どこの過去問を何年分、何クールやっているのか…等々、探りを入れなければ、落ち着かない人が沢山いるということです。

そうなると、わが子を通じて、気になる子の動向を探らせようとしてみたり、ひどい場合は、他塾の子の成績を知るために、その塾に通っている子の知人ママを使って“スパイ活動”をなさる人もいます。
「上だ」「下だ」(何を基準に上下が決まるのかは定かではありませんが、ご自分なりの基準があるのだと思われます)と確認することによって、ある種の安心感を得たいための行為だと思いますが、秘密裏に行われるべき“スパイ活動”は、意外と周囲が知ることになる場合が多いので、かなり危険な行為だと言えます。

何よりも、この比較という行為自体が、我が子のモチベーションを下げる危険性があるので、要注意です。
本来、受験は孤独です。自分との戦いですから。自分に今ない知識を入れて、咀嚼して理解することで、さらなる知の翼を得るために行うことなので、他人の理解度の物差しなど必要ないのですが、親が「他人との比較を良し」とすると、子どもはアッと言う間に、自分軸ではなく、他人軸を基準に生きる人生に傾きやすくなります。受験の本当の良さを体感させてあげられなくなるので、もったいないです。

孤高という、大人の女性の戦術で

もっと症状が進むママもいます。倍率を減らすために、わざと嘘情報を流すママがいるというのもよく聞く話。意中の学校の評判を下げるような話をするとか、自慢話、あるいは逆に「勉強を本当にしなくて困っている」という事実ではない話をして、周囲をかく乱させるなども「あるある」です。

全員がナーバスになるのが受験ですから、ちょっとしたことで誤解を招く、あるいはLINEグループの中で大炎上してしまうことも、私から見ると「通常運転」なわけです。

受験に対して不安を抱いている者同士ですから、話も合うし、共鳴しやすい存在が受験時代のママ友ですが、当たり前の話、ママの友だちを作るのが受験の目的ではありません。

「ママ友情報に真実ナシ!」と私は長年、申し上げておりますが、情報を求めたいならば、その道のプロ一択です。勉強のことならば塾の先生でしょうし、どういう学校かならば、その学校の先生が一番よくご存知です。
そして、どんな学校が我が子に合うのかは、我が子の長所と短所を知り抜いているママ、あなた自身が一番のプロですよ。

ママ友同士のトラブル、あるいは、それに伴う気持ちのモヤモヤ、イライラを背負い込む時間はありません。
親がやるべきは、衣食住を整えた上で、受験生活がスムーズにいくようにサポートすることです。ただでさえ、モヤモヤ、イライラするのが我が子の中学受験ですから、その心に他人の機嫌までを入り込ませないというのも立派な戦術です。

ママ友には「干渉せず、干渉させず。依存もせず、依存もさせず。過剰に期待することなかれ!」が鉄則。
ぜひ、ここは大人の女性として、孤高の戦いをしてみてください。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

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