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共学教育を考える

共学教育を考える

鳥居りんこ

中学受験が支持される理由のひとつに「大学合格実績」があります。
学校は学業を修める場所ですので、どの中高一貫校であっても、生徒たちを志望大学に合格させる取り組みについては非常に熱心です。
先輩から後輩へ、襷のごとく繋がっているノウハウ。これが存在しているという点も中高一貫校の大きな魅力のひとつです。

大学通信が発表した「2023年 東京大学合格者 高校別ランキング」によると、ベスト10の中での共学校は、6位の渋谷教育学園幕張と7位の西大和、10位の日比谷の3校。それ以外は男女別学校で、8位の桜蔭(女子校)を除くと、他はすべて男子校が占めるという結果になっています。
(今年のベスト10ランキングは、開成(男子校)→筑駒(男子校)→灘(男子校)→麻布(男子校)→聖光(男子校)→渋幕(共学校)→西大和(共学校)→駒東(男子校)→桜蔭(女子校)→日比谷(共学校)の順)

ここ数年の「東大常連校ベスト10」には変化がなく、東大をはじめとする「超難関大学合格」は別学校が強いという流れは続いています。
そのため、わが子の最終学歴の照準を難関大学に合わせているご家庭は、やはり、実績のある別学校を支持する傾向があると言えるでしょう。

しかし、全体的には、別学校の数は減少傾向にあり、共学校人気が続いているのが現状です。

前回のコラム「男女別学教育を考える」でも語りましたが、特に共学である「新興校」の人気はうなぎ登り。
例えば、今年の芝国際の2月3日の午後入試は応募倍率が67.7倍、2月5日午後入試は83.5倍。広尾小石川の2月4日午後入試は61.0倍、三田国際の2月4日午後入試は128.6倍、目黒日大の2月4日午後入試は101.8倍を記録するなど、驚異的な数字になりました。
改めて、共学化した新興校への期待度の大きさを見せつける結果になったのは、記憶に新しいところです。

とはいえ、男女別学校と共学校、どちらがいいとは言えません。それぞれにメリット・デメリットがあり、人によって合う・合わないがあるからですが、今回は「共学校」の魅力について語ってみようと思います。

時代は、男女共同参画社会

共学校を支持されるご家庭に聞くと、異性がいる空間で過ごしたほうが、社会に出た時に対応しやすいからという理由を挙げられる親御さんが多いです。

近年、ジェンダーの問題がメディアでも盛んに取り上げられていますが、時代は男女共同参画社会。
国は、「女性」や「男性」というイメージで縛られることなく、異性との価値観の違いを理解し、一人ひとりが持っている個性や能力を十分に発揮できる豊かな社会を推進するべく舵を切っています。
これまでの社会のように「男だから」「女だから」という区分けはしない方向になるということなのでしょう。

さらに、ご存知のとおり、日本もグローバル化の波を受け、多様性が求められる時代に突入しています。
現に、今や、さまざまな国籍の人と一緒に仕事をしている親御さんも珍しくないでしょう。
今の子どもたちが大きくなる頃には、多国籍の人たちの中で働いていることが、むしろ普通になるのかもしれません。
未来予想図がそうである以上、親たちは「わが子をより社会実態にあった環境に置こう。性別を限定しない共学校のほうが、グローバル化が進んでいる」と考え、共学を志望するご家庭が、近年、とても増えてきた印象を持っています。

もっとも、本音の本音を聞かせて欲しいとリクエストすると、「異性がいるほうが楽しいじゃないですか。青春は楽しいほうがいい!」と答える親御さんも意外と沢山おられます。皆さん、正直です(笑)。
「わが子には、恋愛も男女の友情もすべてひっくるめて、青春時代を楽しんで欲しい」と願う親御さん。私はこういう親御さんを持つお子さんは幸せだなぁと微笑ましく思い、お話を聞かせていただいております。

「男女七歳にして席を同じうせず」という故事成語はもはや、意味を成さないのかもしれませんね。

自分とは違う価値観に触れる

先日、京都のスーパー進学校である洛南高校の生徒さんに話を伺う機会がありました。

彼によると、今や、男子・女子という垣根はないようです。
気の合う者同士、他愛ない話で盛り上がる、良い意味でのライバルとして共に学業に励み、仲間みんなで医学部を目指しているというお話だったのですが、彼らのエピソードの数々が「THE青春!」。
「学校生活は充実していて、すごく楽しいです」という言葉通りの毎日のようで、その笑顔を眩しく感じたほどです。

中高時代は、まさに青春を謳歌する時代。異性が近くにいる環境だからこそ得られる経験が沢山あるのでしょう。

まとめると、親が共学校を推す理由は、「異性と接することのメリット」。具体的には先述しましたように、同年代の異性の友人や恋人を通して、自分とは違う価値観に触れることができるために、コミュニケーション能力が磨かれ、それが将来的にも大きな武器になるという期待感があるのだと感じます。

「良い受験」になる、学校選びの視点

共学校のデメリットとしては、別学校のメリットの逆になります。

女の子は精神的成長が早く、男の子は高校生でフルスピードに追いついてくるといった男女の成長曲線の違いがあるため、それぞれの特性に合わせた教育が難しいということ。
さらに、異性を意識しすぎることによる弊害、例えば、本音を出しづらい、性別による役割分担の固定化、恋愛関係などのトラブルによる学力低迷などが指摘されます。

しかし、これらはすべて、その時の周りの環境にも大いに左右されますし、なによりも子ども本人の性格や好みもあります。

親としては、選択に迷うところではあるのですが、やはり、80億人もの人間の中で、わが子のことを一番よく理解できるのは親だけです。

お子さんを今まで育ててきたことに自信を持って、わが子の長所がスクスクと伸びる学校はどこだろうかという視点で、学校選びを楽しんでいただけると「良い受験」になると確信しています。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

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