おかあさんの参考書
お父さん主導の中学受験を考える

お父さん主導の中学受験を考える

鳥居りんこ

コロナ禍を経て、中学受験が過熱していますが、どの中学受験相談会でも、両親揃って来場しているケースが多いですよね。
「母子の受験」は完全に過去のものとなり、「親子の受験」が定番化している証拠でもあります。お父さんが受験を主導するというご家庭も決して珍しくはないので、これも時代の流れなのでしょう。

筆者はそれがよくないことだとは思いませんが、父親主導の受験には、母親のそれ以上の「落とし穴」があるなぁとは感じるところです。
お父さんと子どもの関係は意外と難しいんですよね。

パパ主導の受験にありがちな「落とし穴」

拙書『わが子を合格させる父親道 ヤル気を引き出す「神オヤジ」と子どもをツブす「ダメおやぢ」』(ダイヤモンド社)でもつづりましたが、中学受験界では、「神オヤジ」よりも「ダメおやぢ」のほうが、圧倒的に出現率は高いなぁと思っております。

その理由の筆頭に来るのが、「受験にビジネス手法を取り入れること」。
高学歴で、優秀なビジネスマンほど、このパターンにはまって、親子関係をこじらせてしまう家庭が多いという印象を持っています。

子育ては「仕事」とは違うのでしょうね。営業目標、対前年比、PDCAサイクルなどという「ビジネス上のノウハウ」で受験を見てしまうと、逆に思うようにはならないという“沼”にハマる可能性が高いように思います。

ご承知のようにPDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していく手法のこと。これは企業だけでなく、個人であっても、自身の生活習慣の改善などに有効な手段になるといわれています。
受験勉強にしても、志望校という目標を設定して、それをクリアするための計画を立て→それを実行するべく、様々な手法にトライ→定期的に進歩状況を確認し、結果を検討しながら、微調整→もし、思うような結果になっていない場合は、改善点を考えるという工程を踏むことは多いでしょう。

ただし、問題は小学生の受験だということ。よほど精神年齢が高い子以外は「やらされ感」が高くなってしまうのは仕方ないことです。
先日、筆者は東大理Ⅲに合格した人たちへのインタビューをしましたが、そのほとんどが中学受験経験者でした。しかし、彼らほど“優秀”という称号をほしいままにしてきた人であっても、その多くが中学受験の動機として「『親が中学受験をしろ』といったから」と答えたのです。
もちろん、彼らはスポンジが水を吸う如くに知識を吸収するので、勉強を苦にしてはいないのですが、中には「親から命令されてやる勉強は嫌いだった」とハッキリいう人もいました。

すべてのことでいえると思いますが、やはり人間は、特に目標に向かう場合、自分のタイミングでスイッチを押さないと、どうにもうまく動かないものだと様々な取材活動で痛感するところです。

「ダメおやぢ」7 VS.「神オヤジ」4

先述した拙書の中では、反面教師として、様々な「ダメおやぢ」を紹介しています。ここでは、その中から7つのタイプを挙げましょう。

1. Excelおやぢ……エクセルで模試結果を分析し、偏差値アップ対策にのめり込む
2. バイオレンス切れおやぢ……口癖は「受験なんてやめちまえ!」だが、やめたらやめたで、また切れる
3. 根性論追い込みおやぢ……「気合いと根性で勝つ!」が信条。頑張りだけですべてを解決しようとする
4. 器極小、すり足おやぢ……わが子を全く信用せず、子どもの見張りを怠らない
5. ビジネス用語炸裂おやぢ……仕事用語を駆使して、子どもをコントロールしようとする
6. 報・連・相おやぢ……妻を部下のように扱い「報告・連絡・相談」を義務づける
7. 中途半端にかかわりおやぢ……受験への最終コーナーを回ったあたりから、突然口を挟んだり、途中で役割を放棄する

逆に「神オヤジ」としては、こちらの4タイプを紹介しましょう。

1. 気分転換の達人オヤジ……子どもにリフレッシュさせる役割を買って出る
2. 自分の失敗体験語り部オヤジ……子どもに安心感を与えるために、わざと己の失敗体験を語る
3. 母子バトル仲介オヤジ……裏方に徹し、後方で妻子を見守り、支え続ける
4. 父能研まっとうオヤジ……決して呆れず怒らず、辛抱強く、勉強の面倒をみる

こちらは「神」だけあって、一般人にはハードルが高いです。

「神」になれなくても、お父さんができること

「神」にはなれないとしても、意外にもお母さんたちに人気があるのは、こんなお父さんです。ポイントは次の4つです。

1. 塾の送り迎えをしてくれる
2. たとえ成績が下がっても、冷静でブレずにいてくれる
3. 受験生ではない兄弟・姉妹のめんどうをみてくれる
4. 金だけ出して、口は出さない

よくいわれるように、「中学受験は家族の受験」です。子どもの人生全体から見渡しても、非常に大きな決断になるのは間違いないです。それゆえ、できれば、中学受験参入前にご夫婦で“わが家の教育方針”をよく話し合っていただきたいと思います。
夫婦の意見が一致し、夫婦で協力していくという体勢が取れていないと、子どもが混乱するだけだからです。

何のために学ぶのか、どこで学ぶのか、そのために夫婦でわが子にどう向き合うか。どうすれば子どもの人生が豊かなものになるのか。
中学受験は子育ての一環。夫婦で、教育方針、協力体制などを腹を割って話し合い、時に軌道修正をしながら、子育ての時代を楽しんでほしいなぁと願っています。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

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