おかあさんの参考書
大人になれば、それなりにしっかりしてくるから大丈夫

大人になれば、
それなりにしっかりしてくるから大丈夫

親野智可等

子どものころ嫌だったことを、いま我が子にしていないか?

子どもにはできないことがたくさんあります。

なぜなら、子どもだからです。

今は立派な大人であるあなたも、子どものころはそうだったはずです。

でも、そんなことはすっかり忘れて、子どもを叱っています。

「なんで片づけないの。何度言ったらできるの。ちゃんとやらなきゃダメでしょ!」

「どんどん勉強しなきゃダメでしょ。やることをやってから遊びなさい」

「ほら、これ違うでしょ。この前教えたよね。こんなことじゃ合格できないよ。もっとやる気を出しなさい」

自分が子どものころ、親から叱られて嫌な気持ちになったこともあるはずです。

親の理不尽な振る舞いに涙を流したこともあるはずです。

でも、今では同じことを子どもにしています。

否定的な言葉で叱っていると弊害が出る

上記のような否定的な言葉で叱られることが多いと、子どもの自己イメージが悪くなります。

つまり、「どうせ自分はダメだ。できっこないよ」という自己否定的な思い込みに支配されるようになるのです。

そうなると、よけいにできなくなります。

また、親に対する不信感も出てきて、「こんなダメな自分はもう親に大切にされていないな」と感じるようになります。

そうなると、ますます親の言うことを素直に聞けなくなります。

手伝ったり、やってあげたりすればいい

ですから、子どもができないことを叱るのではなく、少しでもやりやすいようにいろいろ工夫をしてあげてください。

それでも無理なときは、一緒に手伝ってあげてください。

それでも無理なら、親がやってあげればいいのです。

長期的に見て、そのほうがかえって子どもはできるようになります。

なぜなら、自己否定的な思い込みに支配されなくて済むし、よい親子関係も維持できるからです。

親がいちいち叱らずにやってくれると、子どもは親の愛情を実感して親に感謝する気持ちが出てきます。

それによって親子関係がよくなると、親の言うことにも素直な気持ちで耳を傾けられるようになります。

「やってあげると、いつまでも自分でできるようにならない」はウソ

こういう現実的な方法でしのいでいくことが大切です。

それでないと、いつまでも叱り続けることになります。

「やってあげると、いつまでも自分でできるようにならない」と脅す人もいますが、決してそんなことはありません。

こういう現実的なやり方でしのいでいるうちに、だんだん成長して自然にできるようになった人は世の中にいくらでもいます。

一定の年齢になれば、自分の将来を考えて「○○に合格したい」「資格を取りたい」「○○の仕事に就きたい」など、目的意識を持つようになります。

そうなれば、自己管理が必要になりますから、それまでできなかったこともできるようになります。

あるいは、大人になって仕事を始めれば、仕事をクビにならないように、自己管理が必要になります。

仕事や生活がかかってくれば、時間を意識するようになりますし、忘れ物もしなくなります。

子どもは真剣に「直さなければ」と思わない

子どものうちは、「自分の将来がかかっている」とか「生活がかかっている」などの切実さがありません。

子どもは、今日の「今・ここ」に全身全霊で生きる人たちであり、先々のことなど真剣に考えないからです。

しゃべるときはペチャクチャしゃべる。

怒るときはプンプン怒る。

泣くときはギャアギャア泣く。

笑うときはケラケラ笑う。

食べるときはガツガツ食べる。

寝るときは爆睡。

こういったことは、何も考えていないからできることであり、だからこそ美しいのです。

自分の将来や生活のことを真剣に考え始めたら、もう子どもではありません。

考えないから子どもなのです。

だから、いくら叱っても直らないのです。

大人になれば、それなりにしっかりしてくる

大切なことをもう一度言います。

「子どもは将来なんか考えない。だからこそかわいいのであり、だからこそいくら叱っても直らない」

これが子どもの本質です。

これは、コインに表と裏があるのと同じです。

表だけもらっておくということはできません。

かわいいほうだけもらっておくということはできないのです。

表も裏も引き受けてあげるしかないのです。

これももう一度いいますが、大人になればそれなりにしっかりしてくるから大丈夫です。

自己肯定感と親子関係を大切にして育てれば、大丈夫です。

ですから、つまらないことで毎日叱り続けるのはやめて、親子ともども安らかな気持ちで、明るく楽しい生活を送ってください。

しつけや勉強よりも、そちらを優先してください。

子どものうちに直さなければと思い込んで叱り続けると、子どもは自己肯定感が持てなくなって、自己否定感にとらわれてしまいます。

また、親子関係が悪くなって、それが他者不信感にまで発展することもあります。

そうなってしまうと、大人になってからもなかなか難しいということになりかねません。

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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