医学部入試問題分析

慶應義塾大学 【2025年度 物理】

慶應義塾大学 【2025年度 物理】

基本情報試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
分析担当坂本 剛士
出題内容・難易度
大問 出題内容 出題形式 難易度
力学/原子 (小問集合) 記述式
電磁気 (磁場計測法の解析) 記述式 やや難
熱力学 (空気塊の上昇に伴う温度変化) 記述式 標準
問題分析
Ⅰ. 小問集合
問1 斜方投射に関する問題。床と衝突後の放物運動の時間は、衝突前の放物運動のe倍になるという基本知識を知っていれば、容易に完答できるであろう。
問2 放射線に関わる物理量の単位に関する知識問題。慶應大学医学部では過去に何度も出題されているので、定義と単位は確認しておく必要がある。
Ⅱ. 磁場計測法の解析
(a)磁性体の分類に関する問題。普段あまり出題されない形なので、この知識問題は失点してしまってもやむを得ないであろう。(b)磁気量の単位に関してはF=m Hの式を使うとよい。(c)〜(j)に関しては電磁誘導分野の基本公式を使ったやや易しい設定の問題なので確実に得点したい。ただ、(g)と(h)は細かい数値計算をする必要があり、ここに時間を取られてしまうと以降の問題に影響が出てしまう。ここは素早く確実に計算を行いたい。(k)強磁性体内部の磁場と磁束密度の関係式が3次式の形となっているので、展開処理を行うと計算量がかなり多くなる。(l)でH0に比例しない項を消去する回路図を組めたとしても、以降の(m)(n)の問題でこの3次の項の計算処理が再び必要となる。試験時間内にここの設問を全て処理するのは困難であろう。
Ⅲ. 空気塊の上昇に伴う温度変化
問1 飽和蒸気圧曲線を利用した水蒸気の圧力と物質量の計算問題。大学受験物理ではあまり取り上げられない問題ではあるが、問題文の説明も丁寧ではあるし、状態方程式を使うことで容易に正答できるであろう。
問2(c)と問3(f)〜(g)は空気の塊が上昇する際にその気塊が断熱変化をするとみなし、断熱変化の式(ポアソンの式)と状態方程式を使うことで、高度上昇と温度変化の関係式を導く設定の問題である。一見すると解きにくい設定の問題に見えるかもしれないが、この問題は他の私立医学部でも出題されたこともあり、典型標準問題であると言える。入試問題演習が進められていた受験生にとっては問3(g)までは正答できたであろう。(h)自重により空気塊が下がるためには、空気塊にかかる浮力を小さくすればよい。同じ圧力下では温度が高くなるほど密度が小さくなることから浮力も小さくなり、空気塊は自重により下がる。
総評
慶應義塾大学医学部では、例年様々な知識問題が出題されることが多い。本年度も第1問の原子分野で放射線に関する知識問題が出題され、第2問の電磁気分野で磁性体や磁気量の単位が問われた。普段から物理量の細かい数値や定義をしっかりと覚えることを心掛けておきたい。
本年度は第1問の分量が少なく問題自体も解きやすい設定であった。第3問も分量こそ多かったが、内容は標準的な問題であった。第2問に関しては、後半は計算量が多く難易度も高めの設定の問題であったので、試験時間が2科目120分であるということを考えると完答は難しい。どの問題から手をつけていくかの見極めも重要である。
初見に近い問題が出題されその問題の計算が煩雑になることが多いため、高い思考力(様々な物理現象を定性的に捉える力)と定量的な計算処理能力も必要とされる。日頃から時間を測った実践形式で限られた時間内で確実に正答を出す練習を積んでおくことが重要である。

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