
医学部入試問題分析

横浜市立大学 【2025年度 物理】
基本情報試験時間:2科目180分/問題数:大問3題
分析担当谷 卓郎
分析担当谷 卓郎
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
〔Ⅰ〕 | 回転する鉛直平面内円運動 | 記述式 | やや難 |
〔Ⅱ〕 | ベータトロン | 記述式 | 標準 |
〔Ⅲ〕 | 熱力学過程 | 記述式 | やや難 |
問題分析
Ⅰ. 鉛直平面内の円弧状レールの上をすべる小物体。摩擦はない。レールは途中から回転し始める。そこまでは持ちこたえても、その後につりあいからずれた状態での運動を考察させられる。しかもあまりお見掛けしない形の近似式付きだ。さらには運動の様子を図示しろ、とも。典型的な問題を解答通りに答える事しかしてこなかった受験生はここでふるい落とされただろう。
Ⅱ. 問題集にはよく載せられているベータトロン。軌道内部と軌道上で磁束密度が違うことに慣れない受験生は多いが、理解してしまえばそれ以上ではない。最後に磁束密度を全領域で変化させた場合の運動を記述させられるが、最後の1問なので合否にはさして影響しなかったと思われる。やや難しい典型問題なので標準とした。
Ⅲ. 断熱壁で仕切られた2つの小部屋。片方にはピストンがついている。題材はよく見るもので、これだけならばやや易とするが、断熱過程におけるポアソンの法則(P×Vのγ乗が一定)が書かれていない。問題集等ではこの式が与えられることが多いので、憶えてなかった受験生もいたのでは。さらに「理想気体」とは書かれていても「単原子」とは書かれていない。という事は内部エネルギーの式でR(気体定数)を使わず定積モル比熱を使えってこと?でも問題文にそれは与えられていないし、と悩む。解いてみるとどちらでも良かったのだが、(この問題では)余計に気をまわすと時間的ロスにつながる。最後の温度比較は今年の問題では一番難しいのではないかと思われる。以上の間を取ってやや難とした。
総評
この稿を書くにあたって2タイプの読者を想定している。1つは物理で負けなければいい、という者。もう1つは物理で高得点を狙う者。
前者へ。「重要問題集」レベルの問題を繰り返し解くことが必要である。本学はほぼ毎年ちょっと難しいレベル程度の典型問題が出題されるので、それに慣れておけば悪い点にはならない。今年は〔Ⅰ〕が見たことがない図に思われた受験生もいただろうが、求められていることの半分はやや高いレベルの典型処理である。できる分だけ答え、見たことがない問題要求には答えなくとも合格はできたと思われる。よって、先のようなレベルの問題をいかに早く正確に解くかに注力すればよい。ただ、1つの問題集で同じ問題を繰り返すだけでは違う問われ方をしたときに対応できない受験生になってしまう。1つの問題集をやりこんだら、他のものにも手を出そう。
以下は後者向けの内容。今年も題材としては問題集に載っているものが並んだが、小問の中に数問だけ難しいものが紛れ込む。それができるかどうかの勝負になる。今年は〔Ⅰ〕〔Ⅱ〕両方で、「問題に良く出される状態から変化させたときにどういった事が起こるのか」を問われている。典型処理だけを扱ってきた受験生には荷が重かっただろうし、高得点を狙うのであればこういったものに対応できなければいけない。とはいえ、今回に限って言えば、難しい問題集や東北大などの最上位国公立大の問題の経験があれば推測できるものであった。そこで出されるような題材であったり、近似の仕方であったりしたので、そういったレベルの問題経験を積めば、「知っている」ことの組み合わせだけでなんとか答えられたであろう。まあ、そうは言っても時間の足りない現役生にはそこまでの経験を求められないので、その場合には少ない問題で十分な成長をすることが求められる。その十分な成長とはいかにしてなされるものなのか、具体的にはMEDIC TOMASのHPにある医学部入試問題分析の横浜市立大学物理欄にこれまで書いてきたので、そちらを参考してほしい。「問題で言われたことだけをやっていてはいけない」「物理ができる人の感覚を身につけることが大事」など大事なことを書いてきたつもりだ。

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