
医学部入試問題分析

千葉大学 【2025年度 化学】
基本情報試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当竹内 純
分析担当竹内 純
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
1 | 結晶の分類、イオン結晶の結晶格子 | 記述式 | 標準 |
2 | 鉄の製錬と利用、アルミニウムの製錬 | 記述式 | 標準 |
3 | アルケンの反応と構造決定 | 記述式 | 標準 |
4 | 塩基性アミノ酸、ヒストン | 記述式 | 標準 |
問題分析
- 問1~2は結晶の分類と特徴についての基礎的な設問であり確実に正答したい。問題集などでは金属結晶の充填率はよく扱われているが、問3(2)のようなイオン結晶の充填率を計算させる設問は見慣れない。金属結晶の場合と同様に計算式を立てられるだけの理解度が問われた。問4(2)では、ミョウバンの組成式を知識として覚えていなくとも、本文中に示されている単位格子中の水分子の個数から求められるよう配慮されていた。
- 中問Ⅰは鉄の製錬と利用(めっき)、中問Ⅱはアルミニウムの製錬(ホール・エルー法)についての設問であった。問2(2)は、酸化鉄の還元に必要な還元剤の量を求めるという基本的な題材であるが、保温のために燃焼させなければならない量も考慮する必要があった。問5のアルミニウムの製錬に関しては、陽極で起こる2つの反応を切り分けることに注意すれば、標準レベルの設問であった。
- 炭素-炭素間二重結合をもつ化合物の反応とその生成物、および構造決定が出題された。問2では、非対称な分子が非対称なアルケンに付加した場合の主生成物の構造についての知識(マルコフニコフ則)が必要であった。また、化合物Cに対する酸性条件下での過マンガン酸カリウム酸化による開裂反応が含まれているため、化合物Aの構造を完全に決定するにはこの開裂反応の生成物の構造についての知識も必要となっていた。
- アミノ酸とタンパク質を主題とした大問であるが、問3にはDNAについての論述問題も含まれていた。構造式で答える問2や問5は手早く解答したい。問1の窒素含有率の考え方は、有機化合物の元素分析の実験で数値こそよく見かけるものの、自分で分子量から計算することには慣れていなかった受験生もいたかもしれない。問4のヒストンの分子量計算では、複数のアミノ酸(単量体)の分子量を平均して考えるという流れに乗れたかどうかが分かれ目となったであろう。
総評
昨年度同様に大問4題の構成で、昨年度と比較すると過程を記述する計算問題が2題から6題へと大きく増加した一方で、論述問題は20字と短いものが1題のみとなっており、全体としては昨年よりも易化した。大問3では有機化学反応についての発展的な知識を要する設問も見受けられたが、これも近年の本学入試の傾向どおりであった。全体の半分以上が市販の問題集でも扱われるレベルの題材で、習熟していた受験生には取り組みやすく感じられたであろう。
本学をはじめとする国公立大医学部志望者は、市販問題集レベルの内容は目安として10月中までに習得しておくのがよい。その際、単に解くだけでなく、基本事項や問題解法、周辺知識などについて説明する練習を交え、論述問題対策も並行して進めていくと効果的である。そして、11月以降は本学以外の国公立大や難関私立医系大の過去問も用いて発展的な内容に触れ、計算過程の記述や論述問題の実践演習を行いながら、初めて見る内容にも対応できる応用力を鍛えていく必要がある。

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