
医学部入試問題分析

東京科学大学 【2025年度 生物】
基本情報試験時間:2科目120分/問題数:大問2題
分析担当鍛治 彰均
分析担当鍛治 彰均
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
1 | 神経系、内分泌系、ホルモン | 記述式 | やや易 |
2 | 進化、系統分類、植物の生殖、遺伝子発現、ミトコンドリアDNA、遺伝子頻度 | 記述式 | やや難 |
問題分析
- 計17問の出題で動物の神経系と内分泌系からの典型的な知識問題である。複雑な設定や論述に困る箇所は少なく90%近い正解率で通過したい。問題1は教科書レベルの知識の確認ばかりであるが、e)1)では、異種動物だと成長ホルモンの一次構造が異なるため立体構造に差異が生じる事に注意が必要あり、e)2)は教科書や参考書に関連内容がないが、唾液採取の容易さや採血回避による痛みやストレスの減少など人体に対する広い理解が必要で注意したい。問題2はセクレチンの発見についての歴史的な実験を下敷きとした出題で、2つの実験内容と結果から膵液分泌のトリガーが神経ではなくホルモンである事が見抜ける。問題3、4はそれぞれインスリン、パラトルモンに関する機序説明の出題で、理由を端的にまとめて対応したい。
- 計20問の出題で、進化・系統から始まり植物の生殖や遺伝子の転写・翻訳を経て、ミトコンドリア病の集団遺伝まで多岐に渡る。問題1は典型的な知識問題で平易であるが、問題2と3はやや複雑な考察と計算を含み、差が付きやすい内容である。問題1a)では植物の環境適応についての理解を端的に記述したい。後半は単純な知識問題ばかりであり、難所となる問題2のためにも満点ペースが望まれる。問題2はミトコンドリア病患者のmtDNAに存在するPOLGサブユニットにおける*点変異についての説明文を読解し、野生型とヘテロ接合体を交配していく事で新個体の正常mtDNAのコピー数と個体寿命がどのような変化をするかを把握する必要がある。その際、mtDNAが核DNAとは異なるため、母性遺伝する事を見抜かなければならない。これらを踏まえて、変化と理由を時間内に論述説明する能力が試されこの問題の出来が合否に影響しやすかったのでは無いかと考える。問題3の遺伝子頻度の計算は教科書レベルである。
総評
出題内容は例年通り動物生理と進化、系統を中心とし、各大問の中で複数分野の内容を問う構成であった。出題形式も例年通り、本格的な論述説明が大部分を占めたが、本学頻出のグラフの作成と描図問題は出題されなかった。
本学の生物の特徴として私立医大に見られるような異常に細かい知識問題や紛らわし過ぎる選択肢問題がない事と、実験考察問題が同レベルの大学(例えば旧帝大)と比較してかなり少ない事が挙げられる(全く無いわけではないので注意)。実際、今年度の出題では計37個の解答要求に対して、ほぼ全てが知識問題(定義、理由、仕組み、絵図の知識)である。これらの知識問題を取りこぼさない事が不可欠である。教科書・参考書の記述や絵図を精度高く記憶し、速くかつ的確にoutputする訓練を繰り返したい。また出題傾向の類似している京都府立医科大学や滋賀医科大学の過去問も演習し、知識記述まとめノートを作成し知識をプールする事を勧める。

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