医学部入試問題分析

東京大学 【2025年度 化学】

東京大学 【2025年度 化学】

基本情報試験時間:2科目150分/問題数:大問3題
分析担当曽川 潤
出題内容・難易度
大問 出題内容 出題形式 難易度
1 化学結合・分子間力、沸点・融点の比較、氷の密度、混合物の分離、蒸気圧降下・沸点上昇、状態図 記述・論述・選択 標準~やや難
2 気体の溶解、難溶性塩の溶解度積・電離平衡、モール法、酸化還元反応、イオンの形、複合体形成に関する平衡、セッケン 記述・論述・選択 やや難
3 アミノ酸の呈色反応、テトラペプチドの一次構造の決定、不斉炭素原子による立体配置、ペプチドの液相合成・固相合成での構造の変化 記述・論述・選択 やや難
問題分析
  1. 物質の状態変化をテーマに様々な角度から小問が出題された。幅広い知識と思考力が問われた大問であった。エの氷の密度では図1-3~1-5より単位格子中に水分子が4つであることを読み取れれば計算自体は標準レベルである。カはラウールの法則より水溶液中の溶質のモル分率が求まり、希薄溶液なので溶質の物質量よりも溶媒の水の物質量が極めて大きいであることを踏まえて近似をすると、水溶液の質量モル濃度が計算できる。キは初見の実験問題でありやや難しいが、Aの分離操作であることを念頭に説明文よりなぜ温度勾配が設定されているのかまた解答にX・Zでの物質の記述を盛り込むことをヒントにすると考察できる。コは図1-2のCがリード文より液体と気体の両方の性質をもつことから液体と気体を区別がつけられなくなり、蒸発に必要なエネルギーが0となることに気付きたい。他の大問よりは難易度が低いことから大問1は得点源としたい。
  2. 火山ガスに関する物質の構造・性質を問う大問である。イはK1とK2の値から炭酸水素イオンに比べ炭酸イオンと炭酸が少ないことを考察し、2[HCO3]≒[Ca2+]と近似できれば、溶解度積から[Ca2+]を導ける。キの亜硫酸イオンの形の推定はリード文を読解することでも解答できるが、背景知識として原子価殻電子対反発則による分子の形の推定を知っていれば即解できた。ク~コは水素結合による複合体形成に関する問題である。リード文の数理モデルに従って現象を式化して考える必要がある。一見解きにくそうに見えるものの、ク・ケの計算自体は本学志願者の数学力であれば十分対応できる。コはケで導いた条件式から現象を思考・表現することが求められク・ケよりも難しいが、α・βの意味を考えれば条件式を説明できる。大問1よりも難しい小問が点在しているため、解ける問題を選択することが制限時間内に得点を最大化するには必須であった。
  3. ペプチドの液相合成・固相合成についての問題であった。イのテトラペプチドの一次構造の決定では、リード文を整理しても答えが複数考えられることから混乱した受験生も多かったと予想される。クは、不斉炭素原子での立体配置を正しく記述すること、水酸化ナトリウム水溶液中でのペプチドの状態からフェノール性ヒドロキシ基が電離していることの2点を考慮する必要があった。制限時間内に解答するには処理力が求められた大問であった。
総評
【問題構成・分量・難易度】理論・無機・有機分野から大問1題ずつ出題される点は昨年と同様であったが、各大問が昨年までの中問2問構成ではなくなった。小問は昨年度の31問から30問と減ったものの、論述問題が昨年度の9問から13問へと大きく増えた。制限時間内に解答することを踏まえると、難易度は昨年度よりもやや難化した。解くべき問題の選択が重要であった。
【来年度に向けた対策】本学の化学は、幅広い基礎知識・複数の情報を統合して行う読解力・素早く正確な処理力・的確な表現力すべてが求められる。単なる知識の丸暗記では到底対応できないため、普段の学習ではなぜそのように思考するのかを自身で説明できるように練習し思考力の根本的な強化を図ること。また、問題全体量に対する制限時間がとても少ないので、取るべき問題の選球眼も養いたい。

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