医学部入試問題分析

東京大学 【2025年度 物理】

東京大学 【2025年度 物理】

基本情報試験時間:2科目150分/問題数:大問3題
分析担当瀬沼 学
出題内容・難易度
大問 出題内容 出題形式 難易度
1 力学
力のつり合い、剛体、運動方程式
記述式 やや易
2 電磁気
ソレノイドの磁場、ローレンツ力、電磁誘導、相互誘導
記述式 標準
3 熱力学
熱力学第1法則、断熱変化、運動エネルギーとの関係
記述式 標準
問題分析
  1. おもりが3つ結合している問題である。いわゆる剛体の話で、モーメントを考えてゆく問である。この問題は、前半では重心に注目、後半では慣性力などを考えると簡単に答えが出る。しかし、3物体の運動方程式を全部立てる形での解答も考えられ、先のやり方より少し煩雑だが、確実に答えを出せる。どちらのやり方も難しくない。
  2. ソレノイドから始まり、別のコイルに影響を与える、ありきたりな設定であるが、普段の標準問題とは異なり、どこに注目してよいかを吟味しなければならない問題である。選択肢になっている問もあるのだが、かなり選びにくい。設定は複雑でないが、注目するべきところが悩ましい問である。
  3. 単なる断熱変化と考えそうだが、台車の運動エネルギーが出てくる。一見簡単そうだが、運動エネルギーが熱力学第一法則のどこに関係するのか、あまり考えたことない受験生が多いと思う。しかし、問題文なども手掛かりにして、出題意図(正確には物理現象)をとらえて解答する必要がある。前半でその真意を誤解すると0点になる可能性がある。一方、仕組みが分かれば容易である。
総評
昨年、その前の難しい年に比べて、各段に問題が容易になった。量的にも質的にもそうである。時間不足という事もないであろう。75分という試験時間を考えると、この位が妥当であるように思われる。全ての問題に共通して言えることだが、何処に着目すれば解答にたどり着けるのかというという点で、悩ましい問題が多い。具体的に述べる。
第1問は、3物体をどこかまとめて考えを進めてゆくのか、それとも、物体ごとに考えるべきなのかという悩みが生じる。後半も、慣性系で考えるのか、それとも非慣性系で考えるのかという点である。それが明確になっていれば、非常に簡単に解ける。そのような受験生もいるが、何をしたらよいのかが迷う受験生が多数であろう。
第2問は、中盤で、等速を保つために力を加えてゆくが、元になるローレンツ力の着目点で迷う。円形コイルが近づいてくる速度に着目すべきか、それとも流れる電流に対しての力なのか。本来はすべて議論することになるが、問題で要求しているローレンツ力の部分を見定める必要がある。問題をよく読んで、焦点を絞り込まなければならない。
第3問は、最初から、台車の運動エネルギーと気体の内部エネルギーの関係が問われている。台車の運動エネルギーが気体の内部エネルギーに影響を与えるという事が分かればよいが、そもそも、そこにたどり着くのが難しい。本問題でこの対処を誤ると、全て点を失う事になる。解答に使う文字を限定している部分から、ヒントを得ると良いと思われるが、自分の知識に頼ると、誤った方向に進みかねない。
以上のように、通常の問題で当たり前に注目している部分をわざと外してくるというのが、本校の得意とするところである。終わってみれば、「基礎に帰れ」「日頃の鍛錬」等と言われるが、実際普段の勉強は、標準問題を基礎としているため、十分に学んだ上で、焦点をずらされた問題に対応するのは難しい。しかし、合格という面から見れば、必ず克服しなければならない視点である。「せっかく覚えたのに」が通用しないのである。もちろん、その逆で、「問題文に答えが書いてある」という受験生もいる。そういう受験生は、かなり受かりやすいと思われる。受験において、思考力とは、読解能力とほぼ同義であることを心掛けてほしい。

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