医学部入試問題分析

東京大学 【2025年度 国語】

東京大学 【2025年度 国語】

基本情報試験時間:100分/問題数:大問3題
分析担当首藤 卓哉
出題内容・難易度
大問 出題内容 出題形式 難易度
『身体と魂の思想史―「大きな理性」の行方』
田中彰吾
記述式 やや易(昨年並)
『撰集抄』 記述式 やや難(やや難化)
『竹窓二筆』
雲棲袾宏
記述式 やや難(やや難化)
問題分析
一、「鏡像認識」を踏まえて幼少期の「自己」と「他者」の認識について論じた文章であった。「自己」を認識するためには他者の視点が必要という内容で、昨年に比べて分量が約1000字も減少し、内容も易しく、読解しやすい文章であったといえよう。設問数は記述問題が4つ(内1問が100字以上120字以内の指定)、漢字の書き取りが3つで例年と同じであった。特に漢字の書き取りは漢検準2級(探「索」)~6級レベル(「額」)の漢字であり非常に容易であった。記述問題に関しても、解き方は例年通りであり、文中の語を切り貼りし並べるだけでは不十分で、内容を踏まえた上での論述が必要である。特に問四は抽象化しまとめる必要があるので、過去問を利用して記述練習をされたし。
二、本文は『撰集抄』で、これは一昨年の『沙石集』と同じ仏教説話からの出題であった。設問構成自体は例年と全く同じであり、全3問、問一は現代語訳3つ。また問三も昨年と同様に短歌の解釈を説明させる問題が出された。しかしながら本文の読解には文化理解が必要で全体的にやや難化したと言える。まず、問一に関してだが「あさまし」「やつる」「ひが(目)」「やむ」などの基本語句をおさえて現代語訳する必要があり、例年と同様に基礎力が重要であった。問二に関しては文化理解が非常に重要で、特に僧侶が俗世間から離れて過ごすことの知識を持っていることが重要であり、これを踏まえて記述しなければならなかった。問三の短歌解釈の問題は、昨年の問題と同様で、一見難しく思えるが、「はかなし」という語や〝仏教的無常観〟という基礎知識を踏まえれば十分に記述できる問題であった。
三、「執着」は悪いことのように思われるが、道を究めるためにはその「執着」が必要であるということがテーマの文章。特に仏教を修める点について論じられており、「煩悩即菩提」といった概念を知っていれば比較的容易に読解できたが、受験生にとってはやや難儀する内容であった。問一が小問3つで現代語訳、問二は内容を踏まえた上での現代語訳、問三は本文の趣旨を踏まえた上での説明と、出題形式は例年同様であった。問一は傍線部a・bは特に難しいところはなく、漢字の語義や前後の文脈で十分に読み取れるもので、傍線部dは直後の「忽(入三昧)」に着目して訳を考えれば良い。問二は「何」の反語、「独」の句形に留意した上で訳せばよく、問で指示されている「之」の内容も最初に語られるテーマなことは容易に理解できる。問三は「不可有」「不可無」の対表現に着目して説明する必要があり、十分に言及するには実力が求められる問題であった。
総評
大問三の漢文が昨年と比較して8字増えたのみで、大問一は約1000字、大問二は約200字の減少で、本文を読むことに対するペース配分は随分と緩和された。文系に関しては、大問四が例年と変わり小説からの出題であったので、新課程を意識した出題傾向であったが、理系には、その影響がみられなかった。来年以降、どうなるかは未知であるが、いずれにしても本学の問題を解く上で必要なものは基礎である。奇を衒った出題は基本的になく、学校教育で学習する一般的な思想や知識、文化理解といったものの上に、問に対して十分に説明をできる能力を培うことが重要である。共通テストが多大な分量を的確に処理させる傾向にある反面、本学の問題は一問一問を丁寧に考え、基礎に忠実に答えていくといったことが求められている。このような能力は一朝一夕で身につくものではないので、安易に〝技〟や〝テクニック〟に頼るのではなく基礎力を涵養していくことが肝要である。

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