試験時間:2科目180分/問題数:大問3題
谷 卓郎
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
〔Ⅰ〕 | 水面に浮かぶ円柱による単振動 | 記述式 | 標準 |
〔Ⅱ〕 | 直流回路、無限に接続された等価回路 | 記述式 | やや難 |
〔Ⅲ〕 | マイケルソン・モーレーの干渉実験、熱力学 | 記述式 | やや難 |
問題分析
- 大問Ⅰは4年連続単振動であった。昨年まではばねによる単振動だったものが、水面に浮かぶ円柱の単振動である。題材自体は重要問題集(数研出版)など多くの問題集に載っている。違うのは振動の途中から密度が変化すること。“途中で”角振動数が変化する問題はほとんどお見掛けしない。たった小問1問ではあるものの、これをもって標準とした。
- 直列接続された電池と抵抗を一単位とし、それを並列接続させる。初めの5問は数個の接続だが、最後の2問で無限個を考えさせる。無限個、無限回の処理はそれなりに見かけるが、それを回路で扱う問題はあまり見たことがない。よってやや難とした。
- マイケルソン・モーレーの干渉実験において、途中でアルゴンガスを通過させる問題。最後の2問でアルゴンガスに熱量を加え、熱力学を絡めてもいる。屈折率の波長依存を盛り込むことによる変化とその理由記述などもあり、やや難とした。
総評
昨年はこの欄で「書く題材に困るほど平易」と書いたが、今年は選り取り見取りだ。まず、全体の難易度は(国公立医学部レベルで)標準程度、本校の平均レベルではやや難となる。以降、その判断について述べる。基本的に、受験生が見たことがない装置や問題設定であると、途端に始めから手も足も出ない受験生が増え難易度が上がる。それに対し、本校は問題集でよく掲載されている問題設定が多く、はじめの小問は平易である。だが、後半は設定に追加をしてくるので難易度が高くなる。他学部との共通問題であるためにこのような構成とならざるを得ないのであろう。という事は、医学部受験生としては難易度の高い小問を取ることが必要であり、上記の難易度はその数問についてのものである。ちなみに、上で言及していない問題の医学部レベルでの難易度は易~やや易である。
第Ⅰ問の水面での単振動は2017年にも出題されている。この年では振動する物体がコップ状で、中には気体も入っているためその水圧による収縮を考える必要があった。今年は円柱なのでよく見る設定となり、その点では大きく易化している。第Ⅱ問については後述。第Ⅲ問について。ガスを通過しようが何だろうが、光の干渉なので光路差を考えればよいだけであるが、屈折率の波長依存という見たことがない情報を加えたうえでの考察をさせている。さらにアルゴンガスに熱量を加えた際の温度変化でガスの物質量を計算させ(容器の熱容量込み)、「屈折率-1」が密度に比例するというこれまた新情報を与えたうえで計算を要求している。保存や比例なんてものは変化前後での当該量を正確に把握するだけのことであるが、プレッシャーのかかった試験会場で冷静に処理できるだろうか。十分訓練を積んでほしい。
第Ⅱ問の問題設定は上記。後半では多段接続が題材とさていれるが、本校では”N個”や”N回”が題材とされることが多く、その流れで無限大への極限も出題される。今までも2022年第Ⅰ,Ⅱ問、2021年第Ⅰ問、2018年全大問と他大学と比較してもかなり多く、頻出である。よってこのタイプの問題をよく訓練しておくことが重要であるが、今すぐ本屋に駆け込んで問題集を漁っても1冊に数問掲載されていれば良いほうであろう。そのため、「数をこなして処理を憶える」のではなく「少ない問題で本質をつかむ」ことが大事になってくる。復習の際にどういう式を立ててどう計算したかのみを追いかけるのではなく、1つの問題からその解法の奥にある物理的な背景や、解ける人のもつ問題を捉える感覚や目の付け所についてまで理解することが重要なのである。「そうは言われても、それができないから悩んでいるんです。」そう、確かに自分の中に無い考え方を独力で獲得するのは難しい。そこで個別指導を提案する。すでにある解答のわかりやすい説明だけでなく、先生の頭の中にある捉え方やその感覚を明かしてもらう。それを習得することで驚異的な力の伸びを体感できるだろう。