横浜市立大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて180分/問題数:大問3題
分析担当
須藤 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 問題文1;植物の発生と
組織の分化
問題文2;光合成
問題文1は記述式全6問。
論述は25文字、50文字、40文字の3問。
問題文2は記述式全4問。論述は100文字1問。計算問題1問。
易から
標準
2 発生に関する考察問題 記述式全5問。
論述は110文字と150文字の2問。
文字数指定のないものが1問。
標準
3 遺伝子と遺伝子操作に関する問題 記述式全7問。
論述は25文字1問、100文字2問。
易から
標準

問題分析

  1. 問題文1については、植物の発生と組織に関する問題である。概ね基本的な知識を問う問題であるが、(5)の根冠のはたらきはコルメラ細胞のはたらきについても解答する。また(6)のカルスに関する問題はあまり見かけなくなっているので対策が不十分の可能性もある。問題文2については、光合成に関する問題である。(7)では共生説(細胞内共生説)に関して書くことになる。(8)の電子伝達系によるATP合成の仕組みは、光合成のみならず、呼吸についても説明できるようにしておく。(9)カルビン・ベンソン回路、クエン酸回路、解糖系など、代謝経路は確り覚えておく必要がある。(10)は基本的な計算問題。
  2. 背腹軸の決定に関する考察問題である。実験1を読んでいくと胚からmRNAを抽出しているが、胚全体からなのか、胚の一部からなのか、一部からとしたらどの部位からなのかがわからないところが気になるところである。おそらく胚全体からなのであろう。どうやら(3)の問題と関連しているようなのだ。注入したmRNAの量は(3)では(B)と(C)は等しく、(D)より多いとあるから、(B)と(C)には遺伝子Z以外のmRNAも含まれており、相対的に遺伝子ZのmRNA量が少ないことになるということなのだろう。いずれにしても問題文が雑である。(5)の論述問題は150字であるが、基本的な知識論述である。
  3. 遺伝子の基礎と真核生物の選択的スプライシングに関する問題。(1)~(3)は基本的な知識問題。(4)はすべて日本人の功績。(5)は超好熱菌のもつDNAポリメラーゼに関する問題。この酵素はDNAを鋳型にDNAを合成するDNA依存性DNAポリメラーゼなので、鋳型鎖となる1本鎖DNAとデオキシヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)が基質となる。どこかの入試問題でヌクレオチド三リン酸とあったが、これではリン酸が4個になってしまうので間違えないようにしたい。(6)はリン酸が負に荷電している。(7)は選択的スプライシングの問題。(ア)は、真核生物のmRNAはスプライシングを受けてから完成されるのでこれを鋳型にして合成されたcDNAはイントロンを含まないことになる。cDNAの合成には逆転写酵素を用いるが、この酵素はRNAを鋳型にしてDNAを合成するのでRNA依存性DNAポリメラーゼということになる。(イ)は、900bp(塩基対)のところと600bpのところにバンドがあるので、それぞれエキソン1と2と3からなるmRNAとエキソン1と3からなるmRNAが合成されたことがわかる。

総評

 例年通り、理科2科目で180分、生物は大問3問であった。問題の難易度も例年通りで、ごく基本的な事柄から標準レベルのものであった。知識問題が主体であるが、特に高度な知識は必要とされず、教科書レベルである。考察問題もすぐに気が付くレベルで特に高度な考察力は必要とされない。論述問題はほとんどが知識論述で、標準的なものである。考察系の論述も出ることは出るが、これも標準的なものである。対策としては過去問を数年分行い、出題形式に慣れておくこと、標準的な問題集を一通りこなしておくこと(解答を覚えてしまうくらい習熟しておくことが望ましい)、論述に関しては知識論述も考察論述も必ず教師や講師にみてもらい添削してもらうこと、などである。論述に関しては我流ではどうにもならないうえ、自分の欠点に気付かないので、必ず添削してもらうようにする。