横浜市立大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて180分/問題数:大問3題
分析担当
秋田 真澄

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 溶解度及び凝固点降下に関する問題 選択・記述・
論述
標準
2 有機化合物の構造決定 記述・論述
3 銅の反応に関する問題 記述・論述 やや難

問題分析

  1. 前半は溶解度に関する問題。(1)では各物質の極性の有無による溶媒への可溶性に関する知識が問われた。エタノールが親水性と疎水性を有しているのは頻出。(2)は溶解度曲線が読めれば容易に解けただろう。(3)は凝固点降下に関する頻出問題であるが、凝固点降下の原理の説明を求められており、普段から論述の練習をしていたかどうかで差が出ただろう。(4)は凝固点降下から分子量を得る典型的な計算問題を少し応用した問題である。
  2. 例年通り、有機化合物の構造決定に関する問題であるが、登場する有機化合物の数が明らかに少ない。(1)は基本となる有機化合物A,B,CとAから派生したD,Eの5種類のみに関する問題である。問題の指示に従い、成分元素の計算から組成式の決定、分子式の決定から構造式を考える。(2)については、水素の付加反応を経て2,3-ジメチルブタンが生成したと与えられており、反応を遡ればFとGに容易にたどり着くことができる。
  3. 銅の反応を中心に、無機化学反応に関する論述問題が多く出題されている。特に(3)の合金に関する問題については意表を突かれた受験生が多かったかもしれない。合金の定義として「組織」という言葉が使われていることについて、ここでいう「組織」の解釈を求められた。ここでの「組織」は合金の結晶構造のことを指していると考えられ、それを上手く説明できたかどうかがポイントとなっただろう。全体として高い国語力が求められた。

総評

 全体として、細かい計算能力や重箱の隅をつつくような知識問題は出題されておらず、標準的な知識を有しているか、またそれを文章化して簡潔に説明できるかが問われている。また、特に無機分野に関しては、銅の電解精錬、合金の特徴や利用例、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)の製造など、化学が日常生活にいかに応用され得るかに関する出題が多い。これは、ただの受験勉強として化学を勉強するのではなく、将来医師として学んだことを世に役立てることを見据えて勉強している学生を選抜したいという大学側の意図と見て良いだろう。受験生としては、普段の学習からインプットとアウトプットをバランスよく行い、化学の知識とそれを表現する国語力を同時に身につけるような勉強が必要となる。