東京大学
基本情報
試験時間:2科目 150分/問題数:大問3題
分析担当
瀬沼 学

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 力学ベルトコンベアー上にある物体の運動の考察問題。テーマは、加速度運動、単振動、重心速度、相対速度に関連する。 記述式 標準
2 電磁気中心コンデンサーの極板間引力に関係する問題。テーマは、極板間引力、力学の単振動にも関連する。 記述式 標準
3 波動ドップラー効果とうなりに関する問題。 記述式 標準

問題分析

  1. 等速運動しているベルトコンベアーの上に乗っている物体の運動に関するもので、Ⅰについては、基本である。Ⅱについては、上に乗った物体が、Vを超えた場合の処理などが基本的な事項とされている。また、動摩擦力の向きに注意する必要がある。少し難しい知識的側面もある。Ⅲは、いつも通り、重心・相対速度を絡めてくる。分かっていても、難しい問題であろう。
  2. 電磁気と力学の混同している問題。この手の問題は、東大に限らずいろいろな大学で見られる設定である。Ⅰについては、基本事項である。しかし、Ⅱになると、問題が複雑になる。操作が多すぎて、何処に着目するのかがよく分からなくなる設定である。一読しただけでは解答への指針が定まらず、しかも後半は、計算もやや煩雑で解きにくい。
  3. Ⅰは通常の問題である。大問2と同様、Ⅱで手が止まるのが通常であろう。
    よくある問題に見えるのに、何をしたらよいのか迷うのは、よくある問題に似せて、通常と違う視点から問題を問うているから混乱が生じるためである。どちらから引き算するべきなのかなど細かい配慮が必要な問題である。

総評

 去年の問題に比べ、難易度はぐっと下がった。去年は、全ての分野に股をかけ、問題は複雑で見たことがないような形であったが、今年は一転して「よくありそう」な問題であった。だからと言って簡単ではない。一見、見たことある問題を並べているが、「見たことある→このように解く」という暗記至上主義では太刀打ちできない形になっている。それは、あくまで問題の設定上見たことあるだけで、聞かれていることは異なるからである。
 具体例でいうと、大問1では、ベルトコンベアーの上で単振動する話がよく見かける問題だが、そのよく見かける問題とは、かなりずれていて、何が聞かれているのか探ると時間がかかる問題になっている。なお、力学については、相対速度や重心関係を、東大は何度も聞いてくる。過去問を中心に演習を積みたい。大問2は、Ⅱになると操作が突然複雑かつ多くなり、それを解析するには時間がかかる仕組みになっている。単純なコンデンサーと極板間引力の問題から、まるで別の問題になったかのように面倒になる。大問3も同様だが、Ⅱから、あまり見かけたことがないような形になるので、じっくり問題を読み出題意図を探す必要がある。
 東大の場合、2つの特色がある。まず、答えに至る過程が、単純に知識なのか、対称性を使って出すのか、運動方程式を立てて答えを出すのか等、指針が定まらない問題多い(一番良いのは複数の解法が同じ結論に至る事であるが、それはハードルがぐっと上がる)。この足掛かりを探すのに時間がかかる。2つ目は、問題が長いので、これもまた、問題文の何処に注目して答えを出して行くのか迷いが生じる。この2点が混じり合って、一体何をすれば良いのか迷宮入りに入るのである。作り手側が巧妙に問題を作っているからである。
 対処の方法として、基礎力という点はとても大事で、他の大学受験者より、堅固な知識が必要である。また、別の観点からの解法の可能性も探ることも重要である。その上で、特に本番においては、問題をよく読むことである。この訓練をするには、過去問を通して演習するのがよいと考える。