東京大学
基本情報
試験時間:150分/問題数:大問6題
分析担当
霜村 昌美

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 積分法(数Ⅲ) 記述式 やや易
2 平面図形・微分計算 記述式
3 図形と計量・空間ベクトル 記述式 やや難
4 整数の性質 記述式 標準
5 極限 記述式 標準
6 複素数平面 記述式

問題分析

  1. 分母の式を見て、すぐにを用いる置換積分の計算であると思った受験生が多かったはずである。計算量もさほど多くはなく、計算も煩雑にならないため、ここで動揺した受験生は少なかったはずである。
  2. 平面図形においてAQでDRを表そうと思わず、AQもDRもAPを用いて表せることに気がつけば非常に容易に解き進められたのではないかと考える。このような比の最大値、最小値の問題では、特に置いた3点のうち比に使われなかった1点に注目することがカギになりやすいことは言うまでもないだろう。
  3. (1)と(2)は情報の整理を正確に行うことができれば容易に求められた。ただし、情報が多く与えられた場合にはどこから手をつけるべきか迷ってしまったり、図形的に把握することに苦手意識があったりすると解きにくいと感じたはずである。(3)は難しいと思った受験生とそうでもないと感じた受験生が、特に顕著に分かれた問題であっただろう。
  4. 整数の性質に関して証明を含む問題であった。(1)の最大公約数については、すぐに2数の差を求めることに気づかなければならないが、これには容易に気づいたはずである。よって、この問題も決して難しくはない。
  5. 不等式に関する極限を絡めた問題であり、類題を1回は解いたことがある受験生が多かったのではないかと感じる問題であった。しかし、確実に完答するには実数全体で変化するxについて考えられているかを確認することが重要であった。はさみうちの原理を用いたり、導関数の定義を用いたりすることに慣れている受験生もいたはずである。
  6. 条件1,2,3を全て満たすものを1つずつ確認していかなければならない。よって、(1)、(2)に関して丁寧な処理が要求されていることに気づかなければならない。(3)については、必要性と十分性に注意して解き切るには時間との戦いがあったはずである。

総評

一昨年度から本校の入試問題が大幅に見直されている。昨年度は一昨年度より難化し、その上で3年目となるのが本年度の入試だった。ほとんどの問題は、問題文を読めば方針が立てやすいものの、完答するには注意しなければならない。全体としては、昨年度よりやや易化したのではないかと考えられる。注目すべきは、2年連続で確率が出題されなかったことである。これは1999年度以降の入試では見られなかったことである。また、昨年度同様、1問ごとの難易度の差が大きいものになっているように感じるので、確実かつ迅速に解答できる問題から解き進めていくことが重要である。
当然のことであるが、出題範囲については、一見すると数学Ⅲからの出題が多いと感じるかもしれない。しかし、ある分野に限った学習では対応できない問題や、典型問題の知識だけでは完答できない問題というように、総合的な学力をもつ受験生が高得点を取れるように問題が作成されている。これを十分に意識して日頃の対策をしていってほしい。