東京大学
基本情報
国語全体で100分/問題数:国語全体で大問3題
分析担当
武居 裕之

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
第二問 1 現代語訳 記述式
2 現代語訳 記述式 標準
3 傍線部の内容説明 記述式 やや難

問題分析

  1. 現代語訳の問題。前後の文脈を視野に入れて解釈することが求められている。傍線部アは「うるさく」の解釈がポイント。「うるさし」は「煩わしい」の意である。傍線部イは「程」の解釈「限度」がポイント。「程」は「猫を可愛がる程度」のことである。傍線部オは「あらはれ」と「是非なく」の解釈がポイント。「あらわる」は「露顕する」の意、「是非なし」は「やむをえない」の意である。
  2. 現代語訳の問題。主体と言葉を補って訳すことを求められている点が、1の現代語訳の問題との違いである。この問題では、「行く」の主体が猫であることを補うこと、「尋ね」の主体が嵐雪の妻であり、その意味が「捜す」であることがポイント。
  3. 内容説明の問題である。本文6行目の「たばかりて」に着目し、本文6行目~11行目の内容を要約することがポイント。

総評

出典は高桑闌更『誹諧世説』という俳文。大学入試ではきわめて珍しい出典である。近世作品からの出題は2014年度以来であり、俳文が出題されたのは1999年度以来のことである。
本文の長さは約1000字であり、昨年とほぼ同程度の分量である。内容は、芭蕉の高弟である服部嵐雪が妻の偏愛している猫をこっそり隠し、後で妻に露顕し咎められるが、周囲のとりなしで妻が謝罪し夫婦円満に収まったという話である。発句が含まれている点で受験生にはやや馴染みが薄いかもしれないが、基本的には平易な文章であり、展開は比較的容易につかめたと思われる。和歌に代わって発句を含む文章が出題されたが、二句ある発句に関する設問は、文・理ともに見つけられなかった。
本年度は、本文が読みやすかったため、求められる単語や文法の知識はごく基本的なものばかりであった。全体として昨年度より易化したが、それだけに説明問題では過不足なくまとめる縮約力が要求される。解答欄は本年も各問1行であった。
ただ、難度の高い文章が取り上げられることもあるので、語意・語法に注意して逐語訳したり、主語・省略語を補いながら文章を押さえる練習を重ねたりすることが必要である。その上で設問の指示に適うように解答を作成する工夫が欠かせない。また、解答欄が短いので、必要な情報を簡潔にまとめあげる表現力、および和歌の学習も必要である。