東京医科歯科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
分析担当
鍛治 彰均
鍛治 彰均
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
1 |
循環、腎臓、ホルモン、 消化、免疫、血液 |
記述式 | 標準 |
2 | 系統・分類、発生、 生殖、神経、遺伝子、生物相互作用 |
記述式 | やや易 |
3 | 系統・分類、進化、動物の行動 | 記述式 | やや易 |
問題分析
- 計18問の出題で、本学必出の「動物の身体」がテーマで循環器、排出器官、血液、免疫系など頻出問題で構成されている。論述説明も含めてそのほとんどが知識問題であり、正解率85%以上で通過したい。問題b)の人工透析では再吸収ができない事やフィードバック調節ができない事を挙げたい。c)ではリパーゼは膵液に含まれ、消化管に外分泌されるにも関わらず血中に含まれているのならば、膵臓の細胞が破壊されてリパーゼが血中に流出したのだと考え説明するとよい。f)ア)のエリスロポエチンは専門性の高い知識であり差がつきやすい。k)ア)は血漿タンパク濃度低下→血漿浸透圧低下→血管から水分が流出という論理を理解しておきたい。m)では腎臓での尿素の排出能の低下は指摘しやすいが、もう一つを繰り出せるかで差がつきそうである。
- 計12問の出題で系統・分類、発生、神経系、遺伝子など多岐に渡る。いずれも典型的な知識問題であり、ハイスコア獲得が必要と考える。d)ア)は演習経験が無いと原因説明が論点を得ないものになりやすい。胞胚期までの進行は受精までにすでに卵細胞内に蓄積してあるRNAを発現させる事で起こり、胞胚期以降は、精子からの遺伝子を含むDNAの発現で進行する事を理解しておこう。f)では肺胞内に水が溜まる→肺内に取り込める空気の量が低下&肺水内の溶存酸素濃度は低い→呼吸不全という関係を理解しておきたい。i)の相利共生では参考書などでも殆ど見ないタコクラゲと褐虫藻の関係であり、後者が光合成を行える事から、相利となる論理を推測できればよい。
- 計15問の出題で、系統・分類、進化、動物の行動といったコンパクトなテーマからの出題となっている。教科書レベルの知識問題ばかりであるのでハイスコアが必要である。c)では多くの有袋類が陸生であるのに対して、カモノハシは水陸両生であるから競争を避けられる事に気付きたい。d)ア)イ)ウ)は単なる進化の知識だけではなく、進化と遺伝子との関係についての論理的な理解が必要で、特に自然選択や遺伝的浮動によって変異が広がるシナリオ、遺伝的な多様性が増減するシナリオをよく理解し、説明できる能力が試されている。
総評
出題内容は例年通り動物生理と進化、系統を中心とし、各大問の中で複数分野の内容を問う構成であった。出題形式も例年通り、本格的な論述説明が大部分を占めたが、本学頻出のグラフの作成と描図問題は出題されなかった。
本学の生物の特徴として私立医大に見られるような異常に細かい知識問題や紛らわし過ぎる選択肢問題がない事と、実験考察問題が同レベルの大学(例えば旧帝大)と比較してかなり少ない事が挙げられる(全く無いわけではないので注意)。実際、今年度の出題では計45個の解答要求に対して、ほぼ全てが知識問題(定義、理由、仕組み、絵図の知識)である。これらの知識問題を取りこぼさない事が不可欠である。教科書・参考書の記述や絵図を精度高く記憶し、速くかつ的確にoutputする訓練を繰り返したい。また出題傾向が類似している京都府立医科大学や滋賀医科大学の過去問も演習し、知識記述まとめノートを作成し知識をプールする事を勧める。