東京医科歯科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問2題
分析担当
安部 雄太

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 力学 (単振動):ばねに接続された2物体・3物体の運動 記述式 やや難
2 原子 (ブラッグ反射):電子線の結晶格子への入射と干渉 記述式 やや難

問題分析

  1. 水平面上に固定されたばねに接続された小球の運動を問う問題であった。前半は、3つのばねの間に2つの物体を接続、後半は4つのばねの間に3つの物体を接続させ、それぞれの運動を考察させる問題。前半と後半部分ともに誘導に従って解き進めることで処理できるが、後半は指定された運動方程式の作成と、初速度・振幅等を初期条件から導出することに多少時間がかかる。
    途中にミスがあると後半全体に影響が出てしまうため、各物体の座標設定から、各物体に加わる弾性力の向きや大きさ等のミスがないよう、確認しながら進める必要があった。
  2. 電子線のブラッグ反射について問う問題。前半は、結晶に対して屈折することなく反射する場合、後半は結晶内外で電位差があり、電子線が屈折することを考慮させる問題であった。どちらも典型問題であるが、数値計算や式変形などで時間がかかる。
    最後の陽電子の場合については、電子と異なり、結晶に入射する際に全反射を起こす可能性があることを設定から読み解く必要があり、この部分で得点に差がついたと思われる。

総評

 大問2題構成であることは変わりないが、これまでの力学・電磁気からの出題から、力学・原子からの出題となった。
 難易度としては、標準~やや難のレベルであるが、計算等に時間がかかる。そのため、60分ですべての問題を解き終えるのは厳しい。問題自体の難易度から、時間内に確実にとれる部分をしっかりと見極め、75%以上得点したい。
 過去の東京医科歯科大学の物理は、学部共通問題として典型問題からの出題がメインであり、その中で思考力を問う問題やグラフの作成問題等が医学科用の問題として追加されている。過去の問題では時間内に解き終えることも可能であったが、昨年度と今年度の入試では計算等に時間がかかるため、時間内に解き終えることは難しい。
 大問1~大問2前半の典型問題部分(学部共通問題)をミスなく正確に素早く処理し、時間内に解ける問題を取捨選択して得点出来る部分をとりきることが必要となる。
 本大学の対策としては、まず物理の基盤を作ることからである。問題内容自体は基本的な内容であり、学部共通問題も典型問題からの出題がメインであるため、公式の導出やグラフの作成等、教科書・問題集合わせて、基本を重視した学習を行うことが重要となる。物理の基盤が出来れば、本大学の医学科用の問題を考える・解くというところまではたどり着ける。
 加えて、東京医科歯科大学の物理はスピードも必要となる。日頃から問題演習に時間設定等を行い、負荷をかけて練習したい。また、同じ問題レベルの模試なども利用して、時間内にとるべきものをミスなく得点する練習を行いたい。
 年間の予定の目安としては8~9月までに全体の基盤をある程度完成させ、そこから過去問演習・弱点補強を行いつつ、応用問題の演習を進めたい。出題される問題がすべて難しいわけではないため、確実に得点できる部分を落とさないようにする練習と同時に、応用問題が出題されても対応できるように、演習をこなしていくことが対策となる。
 総じて繰り返しの反復演習、その中で正確性とスピードを養っていくことが本大学の合格には必要となる。各単元の基本事項を体系化しながら入試において基盤となる問題の復習を繰り返し行い、制限時間を設けて時間内に処理できるようにすることが大切である。