東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:大問4題
分析担当
増子 拓哉

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 A 確率(反復試行) 答えのみ
2 Ⅲ 微分法・積分法・極限(接線・回転体の体積・
面積・不等式評価)
記述式 標準
3 Ⅱ 三角関数
 A 整数の性質
(三角不等式・剰余の性質)
記述式 やや難
4 Ⅲ 極限
(平面図形と無限級数)
記述式 標準

問題分析

  1. さいころの出た目によって玉の置き方が変わる反復試行の問題。(ア)は玉の合計数に指定があるため場合分けしやすい。(イ)は合計数の指定はないため、順序立てて丁寧に場合分けをすることが求められる。どちらもパターン数が多いわけではないので確実に得点したい。
  2. 直線と曲線およびその接線によって囲まれた図形の面積やy軸周りの回転体の体積に関する問題。(1)の回転体の体積は単純な定積分で処理できる基本レベルの問題であった。(2)は面積比の極限であるが、片方の面積の積分計算が出来ないため、不等式評価をしてはさみうちをするという流れに乗れたかが鍵となる。評価の仕方は複数考えられるが、変数部分を定数化し積分可能にするという解法は多くの問題集にも入っている内容なので、その経験を活かして解き進めたい。
  3. 問題文全体に10種類もの文字が登場し、設定が複雑だったため題意を理解することが難しかった。(1)は連立された三角不等式を解く問題。単位円をa周するためやや考えにくいが、文字を用いながら丁寧に範囲を絞っていくことが求められる。(2)は余りがすべて異なることを示す整数問題である。この背理法を用いた証明は一度経験していないと中々難しいと思われるが、整数の中では有名テーマであり、昨年聖マリアンナ医科大学の記述問題でも出題されたため触れたことのある受験生もいたであろう
  4. 一定の比率で小さくなる図形の面積の無限級数の問題。極限の典型パターン問題であり、用いるものは相似比や三平方の定理と基本的なものだが、比率を求めるまでの計算が煩雑である。比にたどり着けなかった場合、図形を座標平面に落として考えると機械的に求めやすくなる。このような図形問題に対する解法は多く持っておくと良い。比率さえ求められれば完答まで目指すことが出来る。

総評

 全体の難易度は例年通りであった。大問1、大問2(1)は易しく差が付かず、残りの問題にどれだけ手を付けられたかが勝負であった。特に「積分の不等式評価」「題意の把握力」「図形問題へのアプローチ力」が合否の分かれ目になったと予想される。出題分野としては昨年と似た構成になっており、2年連続で大問1は確率、大問2は積分(数列和)の不等式評価、大問3は整数の論証、大問4は図形の計量が主題となった。2019年までは大問1は小問2セットとなっていたが2020年から確率のみで計算量は減り、全体的にこの2年は計算処理能力よりも発想力を問うものを重視している。
 対策として、先取りして解法や定理のインプットを出来る限り早い段階で終え、入試頻出の典型例題・有名テーマには一通り触れておく必要がある。その後はパターンだけで突破することが難しい問題に多く挑戦し、なぜその解法を選んだのか、何が不足してたどり着けなかったのか、より効率的な求め方はないかなど1題ずつ追究する。その経験を多く積んだ受験生は試験当日に有利な思考が出来るようになるだろう。