東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:60分/問題数:大問3題
分析担当
渡邉 哲史

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 【長文読解】空所適語選択、下線部同義語選択、内容一致文選択
英作文
(本文に関するテーマに対しての意見文作成)
選択・記述 標準
2 【長文読解】
空所適語句選択
選択 標準
3 【長文読解】空所適語選択、下線部同義語選択、内容一致文選択 選択

問題分析

  1. 【文章題材】 天然痘の歴史 いかにして根絶できたのか 約570words
    設問構成は昨年度と同じだが、設問数、単語数は増加した。昨年度から新たに導入された本文内容をふまえての意見文作成(英作文)は今年度も出題された。例年と比べて本文が容易であり、短時間で内容把握・論旨分析することができる。内容一致文選択は全問正解できた受験生が多いだろう。語彙問題も本文内容把握をベースとする出題であり、選択肢の語彙レベルは標準的。本文が読みやすいことで油断し精読が雑になってしまうと、空所、下線部周辺の語句から連想されるダミー選択肢に引っかかってしまう。語彙問題で失点していたら、1文の文構造分析、精読プロセスを再度見直してみるべき。
  2. 【文章題材】 日光を浴びることでの治癒効果 約510words
    記述式の空所適語補充がなくなり、適語句選択のみ10題という構成に変化。文量が昨年度から約170words減少し、パラグラフ間の論展開変化の少ない読みやすい文章からの出題であった。しかし、得点の差をつける大きなポイントになったのは、この大問2の出来であったと思われる。約半数の設問が文内容、論旨との一致という判断材料の他に、文構造、品詞の点で入りうるかがポイントになっているのだが、そこに気づくことができないと、本文読解の手ごたえの割には正答を選ぶことが難しい出題になっている。精読力、論旨把握力の両面が求められた構成であったと言える。
  3. 【文章題材】 正解に近いミスが正しい記憶の定着に役立つ 約460words
    適語句選択、同義語選択、内容一致文選択という大問1と同じ構成での出題は昨年度と同様。しかし昨年度新出の、文脈をふまえて文中空所に当てはまる文を完成させる英作文問題が今年度は出題されなかった。本文は1,2段落で主題を示した後は、それを証明するための実験の話が続くだけの把握しやすい文章。本文に書いてあるかどうかの点では正解とすることができても、結論は何か、主題は何かと言う点では適さないという判断が求められた出題があり、論旨把握メインの構成であった。英作文問題がなかったことで十分に時間を使い考えることができたであろう。

総評

 昨年度からトータル約120語減少し、文章レベルも標準的、英作文も2題から1題に減少。易化傾向であった。今年度の問題における注意点としては、入試改革のコンセプトを反映した2017年度以降の長文読解・主旨把握中心の傾向が強まる中、1文の構造分析、精読力を重視する出題がやや増えた点である。もともと重視すべき項目であり、1文の解釈精度の高さが長文読解の論旨把握力の土台の1つであることを忘れてはならない。長文中心というのは、大雑把にストーリーを把握できればよし、細部の精度は重視しないということではない。一定レベルの知識を持ち合わせたうえでそれをどう使うのか、思考力、分析力が重視されており、内容把握面においても表面的な訳出ではなく、本文で述べられている実験は何のためか、どのような意図があるのかなど、正確な主旨理解を問うものが出題される。本質的な意味の理解を伴わない暗記作業ではなく、思考力、分析力を磨くための学習を積み重ねていく必要がある。