東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて120分/問題数:大問4題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 窒素と炭素の同化と循環 語句挿入・記述・
記号選択
標準
2 大腸菌の増殖について 記述・計算・
記号選択
やや易
3 マウスの体色について 数値挿入・記述・計算 標準
4 社会性昆虫について 語句挿入・記述・
記号選択
標準

問題分析

  1. 記号選択が「すべて選べ」であり、正確な知識が求められる。全体的な難易度は標準的で目新しいものはほとんどない。50字の説明記述が一問出題。
  2. 75字の説明記述が出題。実験の考察も平易であり、ここで時間と得点を稼ぎたい。計算問題はやや目新しいものではあるが、予想はつきやすく答えは出せる問題。
  3. マウスのチロシナーゼ遺伝子の発現についての実験考察。ここで塩基配列が表示されているが、該当部分のみの確認だけでいいので時間はかからない。遺伝子頻度についての計算問題や実験の考察問題も出題。標準的であるものの少し差がつく問題構成であった印象。
  4. 前半が社会性昆虫の仕組みと血縁度についての問題、後半がミツバチのダンスについて。前半は進化についての考察記述があり、それがやや答えにくい印象。後半は計算と簡単なグラフの考察。コロナの影響でこの分野の「重い」問題にあたってきていなかったので少し苦労したかもしれない。

総評

 慈恵は例年、前半にある代謝や遺伝子の考察を含めた問題での難易度が高く、そこでの時間や得点のロスを少なくして後半の知識を中心にした問題で得点を整える感じで問題を俯瞰できるのであるが、今年は前半が非常に軽く後半で時間と得点のロスを意識しなければいけない状況であった。前半はどちらもどこかで見たことのある「問題集的」なもので、記述も説明記述と極めて解きやすい状況であった。第3問のマウスの実験も塩基配列が出ているものの、時間のかかる暗号解読はなく、考察の確かさがポイントとなるものであった。時折、最後の問題は進化と遺伝を絡めた問題が出題されており、その年はある程度難易度が上がってくるのだが、今年はそのパターンになった。血縁度自身は極めて「問題集的」であるものの、進化論の考察など単なる説明記述にとどまらない記述問題が出題され、解答しづらい生徒も多かったと思われる。それでも全体的には標準的な難易度であり、時間がかかりやすい問題が少なかったことを考えると「間に合わない」で得点を失った受験生は少ないと思われる。
 「理系標準問題集」(駿台文庫)などによる基本的な問題パターンと知識の定着がまずは必要であることはどの場合でも同じであるのだが、今年のように進化や生態系にもしっかりとフォローを行っておくことが必要なのは私立医学部では少数派となる。国公立志望の生徒と同程度以上にこの分野に対する学習が必要である。グラフや図表の読み取りは「理系上級問題集」(駿台文庫)など「新しい」問題集でのパターン確認と演習を行うことで強化できるが、記述、特に考察記述の精度を上げるにはしっかりとした添削者が必要になってくる。慈恵では100字を超える記述は少ないため、その分必要なことを過不足なく書いておく必要がある。それをいつ、どこで行うかで合格への距離が大きく変わってくる。