日本医科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
分析担当
坂本 剛士
坂本 剛士
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
Ⅰ | (1)斜方投射(力学)(2)摩擦のある単振動(力学) | 解答のみ | (1)易 (2)標準 |
Ⅱ | コンデンサー(電磁気) | 解答のみ | やや易〜標準 |
Ⅲ | 波の反射と定常波(波動) | 解答のみ | やや易〜標準 |
問題分析
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(1)斜方投射の基本問題。斜方投射では水平方向で等速運動の式、鉛直方向では等加速度運動の式をそれぞれ立てればよい。水平方向の距離を最大にするためには変数である正弦の値を1、半分にするときは1/2とすれば容易に投射角度が求められる。
(2)摩擦のあるバネ単振動に関する問題。この問題は「進行方向により振動の中心の位置が変化し、1往復すると元の位置よりも4μmg/kだけ手前で折り返す(μは動摩擦係数)」という摩擦単振動に関する知識を知っている受験生にとっては容易に答えを導き出せたであろう。逆にこの設定の問題をやったことのない人にとっては答えを出すまでに時間がかかってしまったであろう。 -
コンデンサー(コンデンサーに金属または誘電体を挿入したときの電気量、電圧、エネルギー収支に関する問題)
(ア)スイッチを開いて回路に1周がないので、Qが一定。電気容量が半分になるので、電圧は2倍になる。(イ)スイッチが開いたままなのでQは一定。電気容量が2倍になるので、電圧は半分になる。(ウ)前問の(イ)で求めた値を元にE=V/dの公式を使って求めてもよいが、電界は単位面積あたりの電気力線の本数で決まることに注目し、電気量が変わっていないことから電界も変わらないとすることが望ましい。(エ)まず電気容量が何倍になっているかを求め、Qが変わらないことから静電エネルギーはU=Q2/2Cの公式を使えると素早く解答できる。(オ)電池の仕事は「電池を通ったQ×電池のV」である。電池の正極に繋がれたコンデンサーの極板のQの変化に注目する。(カ)回路に1周があり電池のVが一定であることから、コンデンサーのVも一定になる。したがって、静電エネルギーはU=CV2/2の公式を使うとよい。変化を求める際の(前)のエネルギーは(エ)の状態であることに注意。(キ)エネルギー収支を考えればよいが、計算が煩雑なので高い計算力が求められる。 -
水面波の反射に関する問題。(ア)(イ)グラフから波長を求め、波動基本公式v=fλとf=1/Tを使えばよい。
(ウ)〜(カ)自由端反射と固定端反射に関する問題。自由端反射では「波を壁の奥に透過させ透過分を折り返す。」固定端反射では「波を壁の奥に透過させ、透過分を反転させてから折り返す。」という作図の基本に則って解答した受験生が多かったであろう。もちろんこの方法でやってもよいが、問われている時間と位置が、1/8周期後および1/8波長の位置と細かくなっているので、きれいに作図できないと混乱を招くし時間も取られてしまう。作図を用いない解法としては、合成されたあとの定常波の上下振動の様子を考えるとよい。具体的には、まず自由端では腹、固定端では節となり1箇所腹か節かを定める。そして腹と腹、節と節の間隔がλ/2となるので、全体の腹節の位置が定まる。さらに進行波の周期と定常波の上下振動の周期が一致することから、上下単振動の動きを考えることで変位を定めればよい。慣れればこちらの方が断然早く解けるが、少し高度な解法である。
総評
一昨年、昨年と同様に本年も大問3題構成である。第Ⅰ問(2)知識が試される問題。本校では度々この問題のように知識があれば素早く解ける設定の問題が出題されている。第Ⅱ問では3変数のうち一定のものがどれなのかを考え、残り2変数の比例・反比例関係を考えれば素早く解ける。逆にこの解法でやらずに値を1つ1つ求めて代入していくスタイルで解いた受験生にとっては、解答時間がかかってしまったであろう。問われている問題自体は易しめであるが、ミスを誘発しやすい問題スタイルとなっており、これも本校の物理の特徴である。第Ⅲ問は、昨年は小問集合のような構成になっていたが、本年は波動1問となっていた。問題自体は易しめであると感じた受験生も多かったであろうが、それでも得点差がうまれる。上記の通りテクニックも必要ではあるが、それよりも重要なのは本番を想定した「実戦形式の演習」をどれだけ積むかであろう。「標準的な問題を短時間で確実に正答を出す力」が日本医科大学の物理では求められている。