日本医科大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:3題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 読解(総合問題:14題) 選択式と記述式 やや難
2 発音・アクセント・
語彙(8題)
選択式 標準
3 英作文(課題型:1題) 記述式 やや難

問題分析

  1. 「臓器移植」に関する英文で, 約2200語。移植同意のデフォルト・ルールを4つに分け, それぞれの特徴を同意率との関係で論じたものである。設問は, 選択肢群の動詞を語形変化させて記述させる空所補充問題, デフォルト・ルールの概念規定に関する内容一致問題などの選択式問題(選択肢は全て4択)と記述問題とで構成されている。内容一致問題に関しては, 解答の選択肢を選んだ理由を説明する問題が付随しているが, これは例年通りである。なお, 臓器移植に関する英文は毎年どこかの大学で出題される頻度の高いものである。特にそのデフォルト・ルールに関しては, 神戸大(2014), 産業医科大(2014), 山形大(2013), 藤田医科大(2009年)で出題されている。本問で述べられている‘opt in’や‘opt out’という用語は, 医学部受験生としては常識と言うべき概念である。なお, 配点比率は70%ほどであろう。
  2. 枝問で数えると, 発音1題,アクセント2題,語彙5題から構成されている。全てマークシートの選択式(選択肢は全て5択)である。知識系の問題であるが, この様な音声問題に関しては, 発音記号などで覚えるのではなく, CDなどを利用したshadowingやdictationでの学習が日常的に求められる。なお, 択一式ではなく, 解答の選択肢が「2つある」と「すべて選べ」という形式の問題がそれぞれ1題ずつ出されているが, この様な出題形式は例年通りである。配点比率は15%ほどであろう。
  3. 大問1の読解文を前提に, そこで述べられた4つの同意方法を臓器移植以外の状況で説明させるものである。テーマに関わる概念について, 本文で述べられている状況以外の具体例を挙げ, その理由を書かせる問題は昨年度も出題された。本年度の問題では, 医療については終末期医療における「延命治療の選択」, 医療以外では「任意保険の選択」などが挙げられるであろう。難しく考えずに, 各人が選択権を行使できるものを思い浮かべれば良い。具体例の選択で迷ってしまったら, 筆が進まない。なお, 1つか2つのパラグラフで書けという指示があるので, 語数は100~120語程度であろう。配点比率は15%ほどであろう。

総評

 今年度は昨年度より大問数が2題減って3題になった。そのため, これまでの様に時間的に厳しいことはなかったであろう。また, 読解文もそれほど難しいテーマを扱ったものではなく, 読み易い。しかし, 設問が多少難しい。特に, 本学に特徴的な設問形式として, 選択肢を選ばせた上で, その理由を記述で答える形式には注意が必要である。選択肢を選ぶにも, その論理的根拠をしっかり判断して選ぶという思考習慣をつけておく必要がある。この様に本学が受験生に論理的思考力を求めていることは, その設問形式だけでなく, 過年度の出題英文の内容からもわかる。「認知的人工物」(2020), 「確証バイアス」(2019), 「インターネット情報の客観性」(2018), 「剽窃の倫理的問題」(2016),「脳の視覚処理と視覚芸術との関係」(2015),「文化と意味の伝達」(2013),「道徳的判断に対する感情の影響」(2011), 「道徳的であることの損得」(2006), 「問題解決方法」(2005), 「『家族』概念の歴史的変化」(2002)などがその例である。他大学に比べて, 「認識論」に関する問題が出題される割合が高い。なお, 読解文の内容を前提とした英作文も難しい。同じ様な課題型英作文を出題する順天堂大学の問題よりも書く内容が絞り込まれているので, 書きにくいだろう。単に英文の文法・語法的な正しさだけではなく, 読解文の論旨を捉えたものであることも求められるので, 内容面も重視される。したがって, 添削指導を受ける必要がある。以上を要するに, 本年度の問題は, 設問数の減少を除けば, 全般的には例年と大きな変化はない。正規の最低合格ラインは65%ほどであろう。