日本医科大学
基本情報
試験時間:理科2科目あわせて120分/問題数:大問4題
試験時間:理科2科目あわせて120分/問題数:大問4題
分析担当
坂元 亮
坂元 亮
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
[Ⅰ] | コロイド,第2周期 14~17族の水素化合物, C4H10Oの構造異性体 |
記述式 | 易 |
[Ⅱ] | 過マンガン酸カリウム水溶液と過酸化水素水の酸化還元滴定 | 記述式 | やや易 |
[Ⅲ] | 気体平衡と 反応進行度 |
記述式 | 標準 |
[Ⅳ] | フェノール樹脂,カリックス[8]アレーンの複合体 | 記述式 | 標準 |
問題分析
- 例年と比較するとレベルは易しいものであった。昨年度のⅠでは水溶液の電離平衡が出題されたが,今年度の問題はコロイドの知識問題,第2周期14~17族の水素化合物についての知識問題,C4H10Oの構造異性体について問う問題であった。今年度は計算問題がなかったことが特徴である。例年と比べると大きく易しくなっている。
- 過マンガン酸カリウム水溶液を使用した過酸化水素水の滴定の問題で計算問題は3題と少ない方である。問6はブランクテストが行われていることに気が付くことができれば,計算自体は平易なものであった.問9では過マンガン酸カリウム水溶液の硫酸酸性ではない場合の反応性について出題された。代表的な酸化剤で馴染みのある水溶液なので反応性について整理しておきたい.問6と問9以降で解答することができたかどうかで差がついたと思われる。
- 気体平衡であるN2O4とNO2の化学平衡を題材に反応進行度を定義して,穴埋めや計算問題を中心に解答する形式のものであった。本学特有の実験結果からグラフの概形を解答させるという思考を求める問題が出題された。問4の反応進行度はNO2が0.0100 mol存在する場合,反応進行度はN2O4の分解反応から定義されていることに気付きN2O4 0.00500 molから反応を開始したものとして考えることが求められた。例年と比べると標準的なものの,問4のように思考して解答することを要求される問題に対応できたかどうかで差のつく問題になったと思われる。
- フェノール樹脂の付加縮合を題材に,見慣れない物質であるカリックス[x]アレーンの複合体に関する出題であった。フェノール樹脂では中間生成物のノボラック,レゾールの知識や縮合に関する知識を解答する設問があった.化合物を暗記するだけでなく,化合物が生成する過程や反応まで覚える必要はなくとも理解しているかどうか試される設問があった。カリックス[x]アレーンはいくつのp-t-ブチルフェノールから化合物が構成されているかを解答する問題や,元素分析を利用した複合体中の物質の分子式を求める問題が出題された.全体的に本学の試験問題としては標準的な内容の設問であったものの,時間に余裕はない。
総評
例年通り大問4題構成で,難易度は例年よりやや易しくなった.しかし,制限時間に対する問題数はやや多く,時間に余裕はなかったものと思われる.問題ⅠやⅡの計算問題は煩雑なものはなかったものの,知識問題は市販の問題集の発展的な内容から出題されているため,化学の基礎学力が身についている受験生であれば,解答することができたであろう問題であった.問題分析でも触れたが,記述問題では本学特有の物質の反応性に関する考察を求められたため,反応性まで理解を深めたい.
本学特有の実験に関する問題は今年度も出題された.近年の本学入試問題では長い文章を読解し,実験結果を整理して計算する問題と生成する化合物を推定する問題が出題されている.いわゆる難関国公立大学入試特有の出題形式の問題が出題されているため,市販の問題集をしっかりと演習する必要がある.内容を理解して,間違いなく解答できるようにすることと,難関国公立大学入試のような分量の多い記述問題の対策を行うことが本学受験生には必須であると言える.