杏林大学
基本情報
試験時間:70分/問題数:大問3題
分析担当
国政 力

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
図形と方程式、ベクトル、2次曲線 マーク式 標準
微分法、曲線の長さ マーク式 標準
複素数平面 マーク式 やや難

問題分析

  1. (a)  与えられた直線が通る定点を求め、その点から引いた2接線の接点を両端とした弧の長さを求める。扇形の中心角を求めるので、中心と定点までの距離を利用したり、遠回りになるが2接点を通る直線(極線)を利用したりしてもよい。
    (b)  弦の中点の軌跡を求める典型問題であるが、解答群が与えられているので図形的考察で結果を選びたい。弦と中心が作る三角形の面積の最大値は中心角を変数に立式すれば簡単であり、解法選択が時間短縮の鍵となる。
    (c) 直線と楕円が共有点をもつ条件が丁寧な誘導によって求められている。素直に立式していけば、傾きa の値の範囲がわかり、たとえ誘導に乗れなくても、最後の設問は図をかいていれば答えられる問題となっている。杏林の問題では直前までの問題が答えられなくても、解答できる問題が置かれていることがあるので見逃さずに得点していきたい。
  2. (a) 媒介変数で表された曲線の法線を求める。微分法の基本的な問題である。
    (b) 誘導に従って計算することによって、(a)の法線と与えられた懸垂線との関係がわかる。
    (c) 懸垂線に対して曲線の長さを求める基本問題である。この問題も最終結果から、与えられた媒介変数曲線が一定の性質を満たす曲線(懸垂線の伸開線)であることがわかるが、その考察は求められていない。
  3. (a) 前半は与えられた2つの複素数の商を計算するだけであるが、最初から図形的意味を捉えておきたい。さらに、直線に関する対称点を絡めて複素数の商の意味が問われる。最後の設問も対称移動を回転移動と捉え直せば簡単であるが、複素数の扱いに習熟しているかで解答時間差と得点差がつく。
    (b) 複素数の累乗に関する基本問題。(a)の前半ができれば解くことができるので、ここは確実に得点したい。
    (c) 複素数平面上の点列が漸化式の形で与えられている。どのような点の並びなのかを考えるにあたって最初の設問がヒントになり、図形的に捉えることを促してはいるが、漸化式の意味がわからず以降の設問に答えることをあきらめた受験生も多かったのではないだろうか。解答群が与えられている問題は、複素数平面における線対称移動の表し方や共役複素数の扱いができていれば比較的簡単に答えられる問題であった。最後の部分は漸化式の図形的意味を捉えることによって、漸化式を解くことなく極限の位置が求められる。

総評

 試験時間が前年から10分延びたが大問数は変わらず、設問数はむしろ減っている。例年通り図形色が濃いが、近年出題頻度が高かった空間図形が影を潜めて、座標平面・複素数平面上での出題となった。定型的な数式処理ができるだけでなく、図形的な性質をベースとした解法も誘導により考えることができるか受験生に問いかけているものが多い。マーク式であるからこそ、数式に振り回されずに問題の本質を捉えていく姿勢を普段から養っていきたい。問題集の最適解のみを覚えるのではなく、別解や解説に示されていることに興味を持ち自ら問いを立て、時には他人に問うて解決していく姿勢が大切である。