杏林大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
安部 雄太

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
小問集合
力学:力のつり合い・モーメント  
波動:ドップラー効果
マーク式
小問集合
波動:レンズ・鏡  
電磁気:静電気力・電場(ガウスの法則)  
原子:ボーアの原子モデル
マーク式
力学:力積・運動量保存則 マーク式 標準
電磁気:磁場と電場・電磁誘導 マーク式 標準

問題分析

  1. 昨年度と同じく、力学・波動からなる小問集合。すべて基本的な内容となっており、完答したい。
  2. 波動・電磁気・原子の基本的な内容の小問集合であった。こちらも基本的な内容であり、完答したい。
    大問Ⅰ・Ⅱの問題レベルは変化せず、問題量が減少した。
  3. (a)昨年度と同様に、力学からの出題であった。質量が等しい3つの小球A,B,Cによる平面上の弾性衝突に関する典型問題。
    (b)昨年度は、床からの放物運動に関する出題であり、ほとんどの受験生があまり見たことのない問題であった。難易度も高く、完答は難しかったが、今年度の問題は小球B,Cの大きさを考慮して小球B,Cの衝突を考える、力積・運動量保存則に関する問題であった。過去に東邦大学でも同様の問題が出題されており、セミナー物理等にもある問題であったため、完答したい。
  4. 昨年度と同じく、電磁気からの出題であった。問題(c)は昨年度の大問Ⅳと類似の問題であり、過去問対策の重要性が分かる。
    (a) 直線電流が作る磁場中を、正の電荷を帯びた辺をもつ正方形の物体が等速度で運動する設定の問題。物体が受けるローレンツ力によるモーメントを導出させる問題であった。
    (b) (a)に続いて、物体上から観測した場合について問う問題であった。磁場の変化から生じる電場によって、ローレンツ力が電場による静電気力に変わって見えることから、物体に働く電場の大きさと向きを導出する問題であった。
    (c) (a),(b)から正方形の物体を貫く磁束の変化と、(b)から得られた結果の関係を求める問題であった。

総評

 昨年度(2023年度)は大問Ⅲの力学の難易度が高く、以前の2019、2018年度のように、時間内にすべて解くことは難しい問題設定となっており、また試験時間も50分と少なく、解答する問題を取捨選択する必要があった。
 2024年度の杏林大学の物理は、2022、2021年度と同様に、易~標準レベルの出題であり、問題量も昨年度と比較して減少した。そのため、時間内に解き終わる問題内容・問題量になっており、大幅に易化したと言える。そのため、合格点としては85%以上となる。
 杏林大学の物理の出題傾向の特徴として、大問Ⅰ・Ⅱに全範囲の小問集合、標準~発展レベルの大問Ⅲ(力学)、大問Ⅳ(電磁気)が問われる傾向が続いている。試験時間が短いため、基本・典型問題を優先的に選択し、正確に処理することが試される。
 本大学の物理で合格点以上をとるには、日頃から問題をただ解けるようにするだけでなく、各単元の基本内容に穴がないように学習を進めること、速く正確に解くことを意識して学習を進めること、使用教材の繰り返しの学習を徹底することが重要である。
 なるべく早く物理の範囲を進めつつも、並行して復習を繰り返し行い、基本~標準レベルまでの問題でミスなく得点できるようにしたい。時間内に合格点をとるには、年度によっては解けそうな問題も捨てる選択をしなければいけない。受験本番で自信をもって問題を取捨選択できるよう、日々の学習の中で時間設定を行い、繰り返しの演習を意識してほしい。