慶應義塾大学
基本情報
試験時間:100分/問題数:大問4題
分析担当
藤原 大輔

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
〔Ⅰ〕 小問集合 (1)Ⅱ図形と方程式(三角形の外心・内心の座標) 短答式
(2)Ⅲ式と曲線(楕円の接線+図形量の最小)
(3)Ⅲ微分法・積分法の融合問題(関数の最大+面積)
〔Ⅱ〕 AB確率・数列(玉の取り出しの確率漸化式) 短答式
〔Ⅲ〕 Ⅲ極限・微分法・積分法の融合問題(関数の極値+グラフの概形+方程式への応用+面積+ e の定義の極限) 短答式+図示 標準
〔Ⅳ〕 ⅢAB積分法・空間図形・空間ベクトルの融合問題(四面体の断面積・体積+六面体の断面積+図形量の最大) 短答式 やや難

問題分析

  1. 全体的に易しい小問集合で本学受験生であれば落とせない。(1)3頂点の座標が与えられた三角形の外心と内心の座標を求める頻出問題で難なく解きたい。(2)楕円の接線と両軸でつくられる三角形の面積の最小値を求める問題でこれも相加相乗平均の関係を利用する典型問題で易しい。(3)三角関数の最大値と面積を求める問題でこれも計算するだけで解きやすい。
  2. 2019年以来の確率漸化式の出題であった。久しぶりであったが、慶医らしい煩雑な確率の問題ではなく、状態の遷移も操作も単純で漸化式をつくるのは容易であった。また、漸化式の計算も複雑さはなく、bnだけの漸化式をつくり、ていねいに計算を進めていけば問題はない。いかに計算ミスをせず、短時間で処理するかがポイントとなった。
  3. 分数関数に関する数Ⅲの極限・微分法・積分法の融合問題だが、計算量は多くなく、難しくはない。(1)~(3)まではただ計算するだけなので、計算ミスなく解き進めたい。差がつくとしたら(5)でA(m)x(m)ではなくきちんとmの式で表せたか、A(m)B(m)の極限をeの定義の形にもって行けたか、がポイントになったと思われる。この極限はA(m),B(m)mではなくx(m)の式で表しておくと、式変形しやすいし、limm+0x(m)= となることも(2)のグラフから容易にわかるのでお勧めである。
  4. 空間図形に関する問題で今年の問題の中で最も解きにくい。四面体を平面 z=t による切り口Stの条件を幾何的にイメージしにくい。ここは四面体OABCのz座標に注目した平面図を書き出すと、1<t<2 のとき平面 z=t が四面体OABCのどの辺と交わるかを考えやすくなる。(2)で、切り口Stの面積A(t)は1<t<2に注意して4頂点の座標をxy平面(平面 z=t)上に図示すれば、三角形や台形の足し合わせとして面積を計算できるし、四面体OABCの体積V12A(t)dtに底面積A(1)A(2)で高さ1の四面体の体積を2つ足し合わせれば計算できる。ちなみに四面体OABCの体積Vは外積を利用すれば誘導を無視して簡単に計算できるので、実戦的には有効である。(3)は共線・共面条件で計算するだけの平易な問題である。(4)は(2)と同様に考えればよいが、六面体になることとここまでの計算量を考えると時間的には厳しかったと思われる。

総評

 小問を含めた問題数、計算量は昨年並みで、全体として難易度の変化はなく、昨年に引き続きかなり解きやすい問題セットであった。本年は大問〔Ⅰ〕、〔Ⅱ〕を確実に手早く解き、大問〔Ⅲ〕は行けるところまで(可能ならば完答)、大問〔Ⅳ〕は(3)までを取って、目標は70%以上。近年の慶医の傾向を踏まえるとやや計算量が多い標準レベルの問題を限られた時間内にミスなく解き切ることが慶応大医学部攻略のカギとなってくる。攻略のポイントは、①計算量が多く重い計算にも心を折らずにミスなく計算をやり切る精神力、②問題を見て瞬時に効率的な解法・計算法を選択する判断力、③問題を解くのにかかる所要時間や各問題の難易度から効率よく得点するための戦略を立てる戦略立案力、の3点である。