慶應義塾大学
基本情報
試験時間:2教科120分/問題数:大問3題
試験時間:2教科120分/問題数:大問3題
分析担当
曽川 潤
曽川 潤
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
Ⅰ | [理論・無機・有機] (小問集合)DNA・錯イオン・緩衝液・COD |
記述・論述 | やや易 |
Ⅱ | [有機] C4H4O3, C8H4O4, C8H6O5の構造異性体・元素分析・ アニリンのアセチル化・ナイロン66の合成・ カルボン酸と炭酸塩,炭酸水素塩の反応 |
記述 | 標準 |
Ⅲ | [理論・無機] 気体の膨張率に関する実験考察・分子の形・ 硫酸の反応と製造法・二酸化硫黄の反応 |
選択・記述・ 論述 |
標準~ やや難 |
問題分析
- 1.では、昨年度に引き続き、基礎レベルの空欄補充が出題された。素早く正確に完答することが求められた。また、2.では、化学的酸素要求量(COD)に関する実験が問われた。実験の量的関係の図示という見慣れない小問もあったが、医学部入試としては標準レベルの問題であり、ミスなく解き切る必要がある。
- C4H4O3, C8H4O4, C8H6O5の構造異性体の数え上げを中心に有機分野全体の知識が問われた。1.でのA~Dの構造異性体の数え上げでは、「ケト-エノール互変異性」という用語が発展的な知識となるため戸惑った受験生も一定程度いたと思われる。その中で、A, C, Dは思考ステップが多いものの標準レベルであり、1つずつ条件整理すれば解答できる。一方で、Bは、2つのヒドロキシ基から脱水してエーテル結合が生じること、2つのカルボキシ基から脱水して酸無水物の結合が生じることに着想する必要があり、構造異性体の数え漏れが起きやすかった。2.~4.については、2.(4)にてやや計算量があるものの、基礎から標準レベルの問題であった。大問全体として条件整理の量が多い一方、手が止まる部分がほとんどないため、丁寧に得点を積み上げていきたい。
- 1.~3.では、本学の特色である歴史的な実験の考察が問われた。気体の膨張率に関する初見の実験問題であり、基礎知識を活用し論理的に読解する必要があった。実験考察は、昨年度と比較すると易化したものの、やはり応用~発展レベルである。特に、1.Aでは容器の熱膨張に対する補正が読解しづらかった。また、4.では硫酸・二酸化硫黄についての知識・計算が問われた。4.(1)での沸点比較についての論述を除くと基礎・標準レベルであった。
総評
【難易度・分量】
難易度は、本学の特色である実験考察問題が易化し、他の問題も基礎から標準レベルであったため、全体として昨年度より易化した。近年でも最も解きやすい年度であった。一方で、分量は、論述問題が昨年度2問から今年度5問に増え、Ⅱ1.での構造異性体の書き出しが一定量あったものの、全体的には昨年度と同程度と言える。従って、CODなどの典型問題を効率良く解答し、条件整理や考察が求められる実験問題・論述問題にいかに時間を投入できたかが勝負を分けたと思われる。受験者層を考えると得点率85%程度が1次合格に必要なのではないだろうか。
【来年度に向けた対策】
今年度の入試でも、高い思考力・処理力・表現力が求められた。来年度に向けてこれらを総合的に養成することを考えると、第1に基礎力を完成させることが必要である。単元学習では原理を1から説明できるようにするとともに、典型問題を反復演習し工夫した解法を即座に利用できるようにしてほしい。その上で、旧帝大をはじめとする難関国公立の過去問等を利用して、幅広く応用・発展問題にあたり、基礎知識を活用した条件整理・思考のプロセスを強化されたい。論理的思考に裏打ちされた演習経験こそが、初見の実験考察問題を解くにあたっての成功の鍵となるだろう。