慶應義塾大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
分析担当
坂本 剛士
坂本 剛士
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 波動/熱力学/原子 (小問集合) | 記述式 | 易 |
Ⅱ | 電磁気 (電気振動回路) | 記述式 | 標準 |
Ⅲ | 力学 (ビーズ紐の運動) | 記述式 | やや難~難 |
問題分析
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小問集合 問1 人が聞くことができる音の振動数(可聴範囲)の問題。この問題は2022年のIの問1の③と全く同じ問題であり、過去問を解いていた受験生にとっては容易に正解できたであろう。
問2 物体が面を押す力と物体の重力を等式でつなぐだけの問題なので容易に正答できるであろう。
問3 半減期に関する問題。半減期の問題は昨年も第Ⅰ問で出題されている。基本的な知識があれば完答できる問題である。 -
電気振動回路 問1 コイル・コンデンサーがそれぞれ1つずつの電気振動回路の基本問題。(a)~(c)基本知識だが、(d)のキルヒホッフの式は符号に注意して立式する必要がある。
問2 コイル3つ、コンデンサー2つの形の電気振動回路の問題。入試問題ではあまり見かけない形なので一見解きにくく見えるが、誘導が丁寧であるため完答も目指せるであろう。特に前半は問1と同様の手順を踏めばよいので符号に注意して計算を進めて、少なくとも(l)までは正答したい。 -
紐の運動 問1 曲面が受ける気体の圧力の合力に関する問題。直接その力を求めるのではなく、力のつり合いから間接的に求める。2022年のⅠの問2でも似た設定の問題が出題されている。
問2 円運動の運動方程式を立てる問題。n角形の中心角を用いて張力を分解して求める。nが十分大きく、sが小さいという条件からn•s=2πrとする必要があるし、(c)は単位長さあたりの質量を用いて遠心力を求めなければならないなど、問題文の条件から慎重に各物理量を求めなければならない。
問3 力積と運動量の関係からビーズ紐に働く平均の力を求める。熱力学の気体分子運動論で行う手順と一部同じである。f-tグラフの面積を考えることで、どのような値を求めるかを頭の中で整理しながら解いていくとよいであろう。
問4〜問6 ニュートンビーズに関する問題。ビーズ紐が空中に浮くように見える現象について考察する。ビーズ紐が等速で動いていることから鉛直方向でビーズ紐についての力のつり合いの式が成立する。鉛直上向きには遠心力、鉛直下向きには重力がかかる。そして、1つの質点に上向きに力fを加えた際にその質点は加速度運動することなく等速で動いたことから、その質点について下向きに力fがかかっているはずである。(瞬間的に動いたので、その次に続くビーズ紐から下向きに力fで引っ張られた。)その反作用が次の質点を上向きに引き上げ、その質点も等速で動くことから下向きに力fがかかり・・と連続的に動いている。何個かのビーズ紐が引き上げられた瞬間で見れば、ビーズ紐のコップ側の下端は下向きに力fがかかっていることになる。この3つの力(遠心力、重力、力f)についての力のつり合いを立てることで正答を出せる。この原理がよくわかっていなくても、問題文に書いてある指示通りに立式できれば正解できる設定となっている。
総評
例年、第Ⅰ問の中で様々な知識問題が出題されることが多いが、本年度はその分量はかなり減った。知識問題に関しては来年以降また例年通りに戻る可能性もあるので、普段から細かい数値や言葉を覚えることを心掛けておきたい。
また当校では、初見に近い問題が出題されその問題の計算が煩雑になることが多いため、高い思考力(様々な物理現象を定性的に捉える力)と定量的な計算処理能力も必要とされる。日頃から時間を測った実践形式で限られた時間内で確実に正答を出す練習を積んでいくことが重要である。