慶應義塾大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:大問4題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 読解(総合問題:8題) 選択式と
記述式
やや難
2 読解(総合問題:9題) 選択式と
記述式
やや難
3 読解(総合問題:5題) 選択式と
記述式
標準
4 英作文(課題型:1題) 記述式 やや難

問題分析

  1. 「移民に対する医療」に関する英文で, 約700語。配点比率は30%ほどであろう。アメリカが移民社会でありながら, 移民への対応を医学部で教えていないことにより, 臨床現場で既往歴の聴取などに関して混乱が生じていることを問題としている。いわゆる「多様性」に関わる問題として, 時宜を得た良問である。設問は空所補充[動詞の語形変化]1題(10問), 内容説明(40字以内)2題, 下線部和訳2題, 下線部英訳2題の記述式問題と, 内容一致1題(2問)の選択式問題とで構成されている。
  2. 「パンデミックの中での社会的孤立」について論じた英文で, 約700語。配点比率は30%ほどであろう。設問は空所補充[前置詞]1題(10問),下線部和訳4題, 下線部英訳1題, 内容説明(25字以内)1題の記述式問題と, 文の空所補充1題(3問), 内容一致1題(6問)の選択式問題とで構成されている。コロナ禍と直接結び付くものではなくても, 「社会的孤立」は入試頻出テーマである。大阪医科大2018, 岐阜大2009などの問題が参考になる。
  3. 「腸チフスに対するワクチン接種」についての論説で, 約550語。配点比率は25%ほどであろう。他の読解問題に比べて選択系の問題が多く, また設問が英問形式であることは例年と同じである。設問は内容一致4題の選択式問題と, 内容説明(60字以内) 1題の記述式問題とで構成されている。なお, 「ワクチン接種」に関しては, 昭和大2019, 日本医科大2006, 宮崎大2020, 名古屋市立大2020, 三重大2019, 東京医科歯科大2016, 札幌医科大2016, 和歌山県立医科大2006, 旭川医科大2004, 信州大2002, 京都府立医科大2001などの問題が参考になる。
  4. 「COVID-19パンデミックの中での在宅勤務の利益と不利益」について, 約100語で英文を書かせる問題。配点比率は15%ほどであろう。大問2と関連する論題として, そこで述べられている論点を援用できる。そうでなくても, いわゆるコロナ禍の現状で出題されて然るべき論題として, 受験生として十分な対策が取れていたはずである。実際, 今年度では, 「在宅勤務」の問題は国際医療福祉大や防衛医科大の面接の話題ともなっている。利益に関しては, 在宅勤務が単に通勤時間を不要にしたり, work-life balanceを高めるだけでなく, オンライン化を促すことで社会構造を高度化していくことが考えられる。他方で, 不利益に関しては, 大問2で論じられている「社会的孤立」の様に対人関係を希薄化することなどが挙げられるであろう。それはともかく, 本学の課題型英作文はこの様に読解問題と関連していることがあるので, それとは全く独立した順天堂大の問題と違って, 英作文から解き始めないことが重要である。

総評

  問題量や設問の構成は例年と同じである。ただし, 今年度は大問2,3,4に見られる様に, コロナ禍を反映した問題となっているのが特徴的である。この傾向は今年度の私立医学部の出題内容の特徴として他大学でも見られるが, 本学は特にその傾向が著しい。その意味では, COVID-19に関わる問題について全般的な知識を持っていることが来年度の受験に向けても必要である。なお, 正規の最低合格ラインは65%ほどであろう。最後に付言すれば, 本学のように記述問題を重視する大学は添削指導を受けることが必須である。和訳だけでなく英作文も解答案に典型はなく, 生徒一人一人の解答が具体的に検討されなければならない。個別指導が生きる所以である。