慶應義塾大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて120分/問題数:大問3題
分析担当
坂本 剛士

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
力学/熱力学/波動
(小問集合)
記述式 標準~やや難
波動
(気柱の共鳴)/ 力学
(力積と運動量、衝突)
記述式
電磁気学
(荷電粒子の運動)
記述式 やや難

問題分析

  1. 小問集合
    問1 可視光の波長と色の見え方に関する問題である。波長が媒質によって決まるということを理解していれば、容易に正答できる。
    問2  力のモーメントと力のつり合いに関する標準問題。
    問3  円筒間の摩擦による温度上昇に関する問題。この問題を解くためにはあまり多くの知識は必要としないが、仕事とエネルギーの関係および物体の熱容量に関する思考力を必要とする。各物理量の定義をしっかりとわかった上で定量的に計算できる力がないと正答することはできないであろう。
  2. 気柱の共鳴の力学的モデル
    唇を可動できる三角形の板に例えて、そこに吹き込まれた粒子の運動から唇の動きを解析する問題。問4までは標準的な問題であるので必ず正答したい。 問5〜問7は問題文の意味をしっかり捉える力も必要となるし、その後の計算もかなり煩雑なものであるので、時間内に完答するのは困難であろう。
  3. 荷電粒子の運動
    磁束密度がかけられた領域内を動く荷電粒子の運動に関する問題。よく出題されるタイプの問題であるので、この問題は取りこぼしが許されない。 後半のどのようなy0の値に対しても常に定点を通る条件を求める問題は、式を定量的に処理する数学的な力が必要とされる。

総評

 今年度の問題は第Ⅰ問の後半、第Ⅱ問の後半いずれも計算量がかなり多く、高い思考力も求められる問題であったので、例年に比べて難化したと言えるであろう。今年度の問題であれば、7割をとれば正規合格ラインを超えるのではなかろうか。
 慶應医学部の問題の特徴は、1問の中で様々な物理量が与えられることである。その物理量の意味を正しく理解しているかの幅広い知識が必要とされるだけではなく、それらをうまく利用し解答に辿り着くための高い思考力が必要とされる。また、問題集に載っていない初見の問題が出題されるので、それがどの分野のどの知識を必要としている問題なのかを見抜かなくてはならない。様々な物理現象を定性的に捉える力が必要とされる。
 例年かなり複雑な値が答えとなることが多いので、計算力を高めておく必要がある。難しい問題を短い時間で正確に解くことは医師としての適正を試されていると言ってよい。最善の手を打ち困難な状況を切り抜けられる人材こそが医師として相応しい。優秀な人材に来てほしいという大学側からのメッセージであると言ってもよい。
 試験時間内に全問を解答するのは大変厳しい。どの問題から先に解けば、自分のスコアの最大値を出せるのか、そのあたりの戦略も重要である。今年度の問題であれば、まず第Ⅰ問の小問集合の中で比較的易しい問1、2を先にこなし問3は飛ばして、第Ⅲ問へ取り掛かっていきたい。