順天堂大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当
曽川 潤
曽川 潤
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 | |
---|---|---|---|---|
Ⅰ | 1 | 小問集合: 化学結合、溶液の濃度、沸点上昇、同位体とpH、オストワルト法 |
マーク式 | 標準 |
2 | 理論: 混合溶液の蒸気圧とラウールの法則 |
マーク式 | やや難~難 | |
3 | 有機: 芳香族化合物の構造、脂肪族エステルの構造、反応の量的関係 |
マーク式 | 標準~やや難 | |
Ⅱ | 理論: 融合問題(弱酸の電離平衡、中和滴定、溶液の濃度換算) |
記述式 | 易 |
問題分析
-
- 例年に引き続き小問集合が出題された。電子対数・分子の形・極性の有無・水和物の溶解と質量モル濃度の計算・弱電解質の沸点上昇度・重水素イオン指数pD・オストワルト法の反応式と反応量計算が問われた。上位校としては標準的な難易度であり、完答を目指す必要がある。来年度に向けた本学の小問集合対策としては獨協医科・自治医科の過去問演習が有効である。
- 揮発性物質の混合溶液の蒸気圧をラウールの法則から考える大問であった。いわゆる難関校で問われる発展テーマであり、近年では防衛医科2023年、東京慈恵会医科2022年、大阪2021年等で出題されている。演習経験がないと現象の理解に時間を要するため、他の大問を優先して解答するという工夫も必要であった。問3では、リード文の「Aの大気圧(1.00×105 Pa)での沸点は47.0℃」よりAの47.0℃でのAの蒸気圧が1.00×105 Paであると読解し、混合気体の条件整理を行うことが求められたが、ここまでは取り切りたい。一方で、問4は、着眼点が捉えにくく、また全体の問題量に対して解答時間が少ないことから、捨て問としても合理的であった。本学の対策では、制限時間内に得点を最大化するという目的意識をしっかり持ち、解くべき問題を解くことに注力することが重要である。
- 芳香族化合物と脂肪族エステルの構造、エステルの加水分解と酸化に関する反応量が問われた。構造の同定については標準的であり、問2(a)までの小問7つは落とせない。また、脂肪族エステルについては杏林2024年で直接的な類題があったため、併願校として杏林を受験していればより簡単に解答できたと思われる。対して、問2(b)の小問2つでは、アルコールの酸化割合・エステルA, Bの物質量の合計3つの未知数を決定するため、条件より3式を立て3元1次連立方程式を解く必要があり、複雑であった。条件整理と立式だけでなく、計算も重たいため、制限時間内の解答は難しい。思い切って捨て問とできたかが分水嶺であった。
- 融合問題として、電離平衡、中和滴定、溶液の濃度換算が問われた。医学部入試としては小問6つ全てが基礎レベルであり、ミスなく短時間に解答したい。ただ、80字以内の記述問題は慣れていないとやや解答しにくい。セミナー化学やエクセル化学などの教科書傍用問題集で記述問題への対策を行ってきたか、すなわち基礎トレーニングを欠かさず行ってきたかが試された。
総評
問題数は、昨年度の小問31問から本年度は小問33問と微増した。問題の難易度は、昨年度がいわゆる捨て問がなく易しかったが、本年度は捨て問とすべき小問が4つ程度あり難化した。ただ、昨年度が近年では稀な易しい年度であったことを踏まえると、2022年までの難易度水準に回帰したと考えるのが適切である。化学単独での本年度の合格ラインは正答率75%程度と予想する。
本学の化学の特色は、取るべき問題を制限時間内に解き切ることにある。そのため、来年度に向けた本学の対策としては3点が重要である。1点目に高い基礎力を養成する、2点目に難易度がバラバラの問題から取るべき問題を見極めるトレーニングを繰り返す、3点目に上位・難関校を中心に出題される発展的なテーマについて演習経験を積む、である。これらの中でも1点目の高い基礎力の養成は全ての土台となる。教科書傍用問題集であればどこを開いても確実に解答できるようにすることを目標として、秋までの基礎完成を目指したい。その上で、難関国公立・私立の過去問にもチャレンジし知識の裾野を広げていきたい。