順天堂大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問2題
分析担当
中村 達郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
第1問 小問集合、剛体のつり合い、点電荷による電場・電位、
ドップラー効果、 回折格子、質量欠損
選択式
第2問 電磁気学(ベータトロン) 選択式 やや易~標準
第3問 気体の状態変化(P-V比例、断熱変化、定圧変化) 選択式 標準~やや難
力学(単振り子、非慣性系) 記述式 標準

問題分析

  1. 第1問/全体に典型題が多く、例年のように着眼によって解答時間が左右されることもなかった。落ち着いて文章を読み、確実に正答したい。その際、解答欄には注意を払っていたい。どこまでの計算処理を求められているのかわからないといたずらに時間を消費する。問1では浮力の作用点がポイント。水中にある物体の密度が水と等しいとし、そこに加わる重力と同じ浮力が働くと考えるのがアルキメデスの原理。一様な棒とあるので当然水中部分の中点に働く。問2~問5は基本公式を覚えていれば容易。
    第2問/円周内部の磁束密度を変化させ、その結果生じる誘導電場によって電荷を加速させるベータトロンの原理を扱っている。誘導が丁寧で、特にベータトロンと意識しなくても楽に解き進められる。ただし慌てていると領域2の面積を間違える可能性もある。雪崩は起きないように工夫されているが、それでも問2(a)を間違えると問3(b)に響く。
    第3問/単原子分子理想気体との指示はなく、定積モル比熱が与えられている。普段から定積モル比熱の扱いに慣れている人には良いが、そうでないと戸惑いがあっただろう。また、比で答える、微小変化を扱う、と本年度では唯一順天堂らしい問題だった。問1は定積モル比熱を用いて内部エネルギー変化を表す問題。ここを間違えると全滅しかねない。状態変化に関わらず、気体の内部エネルギーは温度に比例し、1モル当たりの比例係数が定積モル比熱で表されることを正しく理解していたか。この問いが最大の分岐点だった。問3ではマイヤーの関係を意識できたかで解答時間に差がついただろう。問4はP-Vが比例関係なのだから、微小変化を考えずともC→Aにおける変化を考えれば速い。問6はやや難しく、断熱変化でも微小変化なのだから、気体のする仕事を定圧変化での仕事とみなせたか。一度でもポアソンの公式を導出した経験があると有利になる。ただ、最後の小問でもあり、ここを飛ばしても大勢に影響はない。
  2. 単振り子をめぐる問題。そういえば昨年度も単振り子の周期の導出過程が出題されていた。記述の出来が良くなかった可能性がある。本年度も問題自体は簡単だと思うが、「考え方を記せ」に苦慮した受験生も多かったのではないか。必要な文字、座標軸も定義されており、何を書けばよいのか、と。問2などでは、「運動量保存則より」など本文中の言葉をなぞることになっても一言添えるほうが無難だと思う。本格的に記述が試されていたのは問5だろう。これが昨年度と同じ類の問題。ただし誘導がより丁寧になっている。(a)では変位xにおける復元力を書き出せばよい。(b)では媒介変数としてxを扱えばよい。指示に従い丁寧に記述したい。

総評

 昨年度に続き易化している。大問Ⅰ第3問の後半を飛ばせばよい、と考えると時間的にも窮屈でない。落ち着いて本文を読み、ミスなく解き進めることができれば8割以上とることも可能と思われる。だとするとその「落ち着いて」がポイントだったかもしれない。落ち着くためには公式の導出過程を理解しておくことが重要だ。今回で言えば「アルキメデスの原理」「気体の内部エネルギー」「マイヤーの関係」「ポアソンの公式(断熱変化)」「単振り子の周期」などの導出ができていれば出題者が何を望んでいるのか理解することができ、的確に対応できただろう。名問の森、過去問などで受験典型題を解き慣れておくとともに、公式導出にも力を入れて本番に臨みたい。