順天堂大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて120分/問題数:大問2題
分析担当
勝亦 征太郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 細胞分裂
(体細胞分裂、減数分裂、細胞周期)
マーク式
2 光合成
(光化学反応、カルビン・ベンソン回路)
マーク式
3 動物の発生
(ウニと両生類の発生過程)
マーク式 標準
血糖濃度調節
(ホルモンと受容体、糖尿病)
記述式 やや易

問題分析

    1. 細胞分裂に関する基本的な問題。細胞周期に関する基本的な計算問題があった以外は、全て基本レベルで頻出の知識問題であった。教科書や資料集で用語や体細胞分裂と減数分裂の違いなどに関する知識を整理し、教科書傍用問題集などで演習した内容が定着していれば、知識問題も計算問題もスムーズに完答できたであろう。
    2. 光合成に関する問題。チラコイドにおける光化学反応と、ストロマにおけるカルビン・ベンソン回路についての知識問題であった。カルビン・ベンソン回路について若干細かい知識が問われているものの、これも教科書や資料集で用語と光合成に関する現象を覚え、教科書傍用問題集などの演習で内容が定着し、現象の理解が進んでいれば短時間で完答が可能である。
    3. ウニと両生類の発生過程についての知識問題。教科書や図説に記載されている内容がほとんどであり、ここも高得点勝負となったであろう。そのような中で、問1における(10)のプルテウス幼生期に変態がおきて稚ウニとなることや、(12)の最後の卵割が胞胚期に終了する(通常の体細胞分裂に切り替わる)ことを問うた問題は細かい知識が要求された。特に後者は教科書や資料集に記載がないレベルのかなり細かい知識であり、既習で自信を持って正答できたのは受験生の5%にも満たないのではないだろうか。問2の二次間充織から生じるものを選ぶのも正攻法ならばかなり細かい知識が必要だが、ここは骨片が一次間充織由来であることを知っていれば消去法で正しいものを2つ選ぶ形で対応できる。問3は若干答えにくい問題もあるが、教科書や資料集にあるウニとカエルの発生過程の写真や関連する文章について、どれだけ正確に捉えて理解しているかで得点に差が出る知識問題であった。教科書や資料集を読み込んだうえで、自分で内容を整理して落とし込んでいる習慣がないと対応は難しいだろう。部分的に高いレベルの知識が要求されてはいるが、全体としては教科書レベルの知識定着を求められており、難易度は標準レベルと判断した。
  1. この大問Ⅱは例年記述式の考察問題が出題されるが、今年度は記述式の知識問題といえる内容の出題であった。問5の記述問題が若干考えさせられる問題だが、脳は血糖を主なエネルギー源とするため血糖量低下に特に敏感に反応してしまう、ということを知っていたかどうかという問題。その他の問題は、血糖濃度調節に関するホルモンに関する知識、標的細胞における受容体の位置と作用のしくみに関する知識、糖尿病に関する知識について教科書や資料集のレベルで習得できていれば難なく正答できるであろう。問5と問8で若干細かい知識を要する分で難易度をやや易としたが、標準よりも易に近いレベルであろう。

総評

 出題形式に大きな変更はなかったが、問題文の量は減少し、全体の9割以上を占めるほど知識問題の比率が上昇した。その結果、全体での難易度は昨年度と比べて大きく易化した。得点差がつくのはⅠ-2動物の発生過程の問題であろう。来年度も同様のレベルと分量とは限らないが、教科書や資料集の用語や現象といった知識内容を丁寧に学び、標準的なレベルの問題集演習でそれらを自在に使いこなす力を養いつつ、関連する知識や考え方を経験豊富な講師から学ぶ必要があるだろう。