順天堂大学
基本情報
試験時間:70分/問題数:大問3題
分析担当
増子 拓哉

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 (1) Ⅲ 複素数平面
(原点周りの回転・円の方程式)
マーク形式
(2) Ⅱ 微分積分
(3次関数と面積)
マーク
形式
やや易
(3) Ⅰ データの分析
(平均値と分散)
マーク
形式
(4) Ⅱ(Ⅲ) 図形と方程式など
(線形計画法・楕円)
マーク
形式
標準
2 ⅠA 図形と計量・
図形の性質
(正五角形と空間図形)
マーク
形式
やや易
3 A 整数の性質
(割り切る最大の整数の論証)
記述形式 やや難

問題分析

  1. (1)与えられた複素数を極形式に変形し、原点周りに回転させる基礎的な問題である。最後も2点からの距離の比が指定されている基本例題だった。アポロニウスの円の知識があれば複素数特有の計算をしなくても解くことが出来る。
    (2)前半は単純な整式の定積分計算と変曲点を求める易しい問題である。差がつくのは後半で、3次関数が持つ対称性を利用して立式をしたときに前問の定積分に似た形だと気付いたかどうかである。平行移動や置き換えをしてズレを修正することが出来れば完答まで進められる。
    (3)整数が並んだデータの平均、分散を求める問題である。分散の2つ目の定義式を知らないと困難であった。平方数の和を数列のΣ公式を用いて処理することや、整数であることを利用して候補を絞り込むなど、他分野の力も求められた。
    (4)x,yの2変数の範囲が指定された中で2次式の最大値・最小値を求める問題。線形計画法や1文字ずつ平方完成するなど解法が複数存在する。特に後半は置き換えをして放物線での線形計画法に帰着できれば時間的な差をつけられるだろう。
  2. 正五角形の対角線や面積、外接円などの計量をさせ、最後は五角錐と正二十面体の計量に応用させる問題である。私立大学医学部でよく出題されるテーマなので過去問で触れる機会は多く、今年度の共通テストでも同じ図形が題材になっていた。
    黄金比の値でもある対角線の長さは覚えておくか、すぐ導出できる状態にしたい。1か所2倍角の公式を用いる部分があるがそれ以外は三平方の定理や三角比の定義に従うことで進められる。
  3. 割り切る最大の整数を定義してその大小関係を論証する問題。(1)は具体的な数値で行うためすぐ特定できる。(2)から抽象的で取り掛かり辛いが、定義されたものを1つずつ式化することで見えてくる。(3)は文字数が増え、思考する時間が十分とれないことから手を出せなかった受験生が多いと予想される。互いに素である文字を導入したり大小関係を仮定したりと論証で用いるツールを多く持っているかが鍵になる。

総評

【難易度と量】 全体の難易度は例年に比べて下がったが、時間に対しての計算量は依然多いため、計算スピードと精度が合否に影響したと予想される。構成は大問3題でマークシート形式が2題、記述形式が1題という例年通りの枠組み。ただし、大問1の小問集合は2018~2020年度までは3つだったが今年は4つに増え、2015~2017年度の問題数に戻った。大問1を1ミス程度に抑え、大問2は8割、大問3は(2)までを取り全体で75%を目指したい。
【出題分野】 数学Ⅲの「極限・微分積分」の出題がなかったことが特徴的である。数学Ⅲの「式と曲線」も4年連続で出題されていたが、本年度はほとんど触れられていない。このように数学Ⅲの割合が低いのは本年度だけの特例である可能性がある。次年度に向けては数学Ⅲの対策や前の年代の過去問研究も欠かせない。
【対策】 基本~標準問題も出題されるためここを素早くミスなく解けるよう問題集で反復練習をする。解法が複数存在する問題では別解も意識し状況に応じて使い分けられることが望ましい。その後、有名図形、有名曲線などの入試頻出テーマにも踏み込むと有利になるだろう。また、空間図形や論証など差がつきやすい問題で思考訓練を積むことも大切である。