順天堂大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて120分/問題数:大問4題
分析担当
曽川 潤

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 小問集合 マーク式 標準
2 理論:アンモニアに関する気体の法則、
化学反応の量的関係、反応熱
マーク式 標準
3 有機:トリエステルの構造決定 マーク式 やや難
理論:反応速度、
化学平衡
記述式 やや易

問題分析

    1. 昨年度と同様に小問集合であったが、小問数が昨年度の14問に比べて今年度は8問と大きく減少した。一方、小問の難易度は全般的に昨年度と同程度であった。ただ、問4では本学で頻出の複雑な条件整理が出題され、モル濃度を着眼点とした条件整理と計算を速く正確に行う必要があった。過去問傾向を分析し事前に準備が求められる一問であったと言える。来年度の入試に向けて注目しておきたい問題である。
    2. 理論分野より、気体の状態方程式、化学反応の量的関係、ヘスの法則、平均分子量といった典型テーマが問われた。問2、問3は思考を要するやや応用問題であるが、合格ラインを着実に突破するには取り切りたい。問2(a)では、反応熱の定義から熱化学方程式を即座に立式し、与式と結びつけるとヘスの法則が利用できるという着眼点が必要であった。また、(b)では、混合気体の密度から混合気体の平均分子量に着想することが重要である。問3では、アンモニアが分解した後の温度・圧力より分解生成物の総物質量が求められることがポイントであった。
    3. 有機化学よりエステルの構造決定が出題された。例年と比較して難易度が上がり複雑な問題であった。また、小問ごとの難易度に大きなバラツキがあった。その為、取るべき問題の選択と解答時間のコントロールが肝要であった。具体的には、元素分析と分解物の炭素数などの条件から問1, 2, 3, 7, 8といった比較的取りやすい問題で得点し、問4での複雑な構造決定を一旦保留するといった工夫が求められた。本学の化学では解答時間に対する問題量の多さが特徴として挙げられるため、来年度への対策としても問題の取捨選択には留意しておきたい。
  1. 理論分野より、反応速度・化学平衡が出題され、グラフの読み取り・図示が目立った。医学部入試としては基礎から標準レベルの問題が多く、合格ラインを突破するための得点源にしたい大問であった。例えば、問1(a)での平衡状態の定義、問2(a), (b)での圧平衡定数と濃度平衡定数の関係、(c)での平衡時の物質量の計算は典型問題であり確実に取ることが求められる。一方、問1(b)、問3(b)でのグラフの図示、問3(a)での記述は、制限時間内に解答を書き切れなかった受験生も一定数いたと予想される。問題全体での解答時間の管理も必要であった。

総評

 小問数が昨年度の37問から今年度は31問に減ったものの、解答時の時間的な余裕はほとんどない。その為、本学への対策として、①典型・頻出問題への処理力を向上させる、②取るべき問題を見極め解答できるようにする、の2点が重要である。特に、前者については、本学では理論分野からの出題割合が多いことを考慮し、理論化学の典型的な応用問題に対し即座に解法を想起できるようする必要がある。また、頻出である複雑な条件整理では、表・図といった条件整理手法の習得および基礎計算力の向上が求められる。すなわち、本学の化学の攻略にあたっては、高い基礎力を身に付けることが肝要である。