千葉大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて100分/問題数:大問4題
分析担当
坂元 亮

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 15族N,Pの各論,
アンモニアを題材にした理論・無機複合問題
記述式 標準
2 化学反応とエンタルピー,
反応熱の測定実験
記述式 標準
3 芳香族化合物 フェノールの誘導体 記述式 標準
4 天然高分子化合物 
アミノ酸とペプチド
記述式 標準

問題分析

  1. 無機化学の15族の各論とアンモニアを題材にした気体の問題,ルシャトリエの原理についての理解を問う内容が出題された。問4のルシャトリエの原理に基づいて平衡が移動する現象についての論述は,問題集に出題されている問題の現象を書き起こして説明できるように練習していれば解答できたのではないだろうか。問5の計算過程を書かせる問題は同体積,同温度のもと,圧力を比較すればモル分率の計算ができることに気付ければ解答できたであろう。
  2. NaClを題材にした格子エネルギーを求める問題とNaOHの溶解に伴う熱量を求める問題の2題構成であった。問3でエンタルピーについて問う出題がされた。一部の教科書にしか記載がないため,多くの受験生は知らなかったものと思われる。それほど差がついたと考えなくともよいと思われる。問4でエネルギー図をもとにして発熱反応を選ぶ問題は,エネルギーが高い状態から低い状態へ変化している反応を選べばよい。エネルギー図によって反応熱を求める練習が十分に積めなかった受験生には厳しかったかもしれない。
  3. フェノールを中心とした反応性と製法を中心に出題された。問2はフェノール樹脂の知識について問われた論述問題であった。一般に熱硬化性樹脂は立体網目状の構造をとるため,加熱しても軟化しない。このように知識のみでなく,理解して説明できるように学習することが国立大医学部受験生に求められる。なお,フェノール樹脂については東京慈恵会医科大学でも出題されている。問4の配向性を題材にした問題は発展的な内容であるものの,解答できる知識をつけておきたい。
  4. アミノ酸やペプチドの知識を問う問題と,電離定数を使った電離平衡の問題,塩酸塩となったアミノ酸の決定問題がメインとなった。アミノ酸の電離平衡の問題は類似問題を解いた経験が差につながると思われるため,化学平衡の学習をする際はおさえておきたい。電離定数の式に水素イオン濃度を代入してイオン濃度の比を求めることに気付けたかどうかがポイントとなる。

総評

 難易度は昨年度と同程度で、例年並であった。試験時間は100分で理科2科目を解答することになっている。今年度は大問4題構成で,昨年度と比べると大問1題減少した。論述問題は2題,計算過程を書かせる問題は1題となり,合わせると3題となった。例年の論述問題と計算過程を書かせる問題を合わせると5~6題ほどであるため,今年度は大幅に減少した。問われている内容は比較的平易なものが多かったが,今年度の難易度が今後も踏襲されるとは限らない。9~10月頃までに市販されている問題集の典型問題の内容の定着を万全にして,完成度を高める準備は引き続き必要となる。
 本学は論述問題を毎年必ず出題している。例年は60~80字以内の論述問題も出題され,他の国立大学医学部入試と比べると字数の多い論述問題が特徴となる。論述問題の主な内容は現象についての理由を問うものである。日頃から現象や化学用語を書いて,正確に現象を捉え,説明できるようにする練習が必要である。また,実験器具の名称や使用目的も教科書や資料集を使って覚えておく必要がある。