千葉大学
基本情報
試験時間:理科2科目あわせて100分/問題数:大問4題
分析担当
坂元 亮

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
2 弱酸の電離平衡、緩衝液、
強酸と弱塩基の中和反応に
ともなう反応熱
記述式・
論述式
やや易
3 理想気体と実在気体、
気体の平衡
記述式・
論述式
やや易
4 C18H18O2のエステルの
加水分解と構造決定
記述式・
論述式
標準
5 高級脂肪酸と油脂、
油脂と糖類の燃焼
記述式・
論述式
標準

問題分析

  1. 弱酸である酢酸を題材とした電離平衡の問題であった。内容は標準的で電離定数を表す問題、強酸との混合溶液の水素イオン濃度を求める問題、緩衝液のpHを求める問題、最後に強酸である塩酸と弱塩基であるアンモニアの中和反応にともなう反応熱を求める問題が出題された。試験時間から考えると分量的にも適切な量であった。
  2. 昨年と違い、ⅠとⅡの2題構成の問題となり、気体に関する出題が中心であった。内容は標準的で理想気体と実在気体に関する圧縮率因子と温度についてのグラフの考察問題、気体の平衡では圧平衡定数を表す問題、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係式を求める問題が出題された。内容、分量ともに適切であったと考えられる。
  3. 昨年と違い、ⅠとⅡの2題構成ではなくなった。エステルを加水分解し、得られる化合物からもとの化合物の構造を決定していく内容であった。化合物Dが高分子化合物の単量体として用いられることと、水の付加反応からマルコフニコフ則をもとに化合物Eの構造を決定できる。化合物Cに硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液を作用させると炭素間二重結合が酸化され、カルボン酸が生成する。この反応による生成物のヒントがその後の問題文に載っているため、生成物を容易に決定できる。化合物Fは安息香酸と決定できるだろう。
  4. 油脂を題材とした構造決定の出題であった。内容は標準的で元素分析と実験装置に関する論述問題、油脂の分子式を決定する問題、知識を問う問題、油脂とグルコースによる完全燃焼によって発生する熱量の大きさに関する問題などが出題された。油脂に関する出題は本学医学部では2010年度以来である。近年は糖類、アミノ酸・タンパク質、核酸を中心に出題がされていたが、今回油脂からも出題されたため、単元に偏りがなくなるように学習を進めていきたい。

総評

難易度は昨年と同程度で、例年並であった。昨年度から試験時間が短縮され、100分で理科2科目を解答することになっている。今年度は有機化学からの出題である4で中問がなくなり、理論化学からの出題である3でⅠ、Ⅱの中問2題構成に変更となった。論述問題は、昨年度は7問で、今年度は8問と増加した。今年度の入試問題は本学で頻出の気体、化学平衡からの出題があった。問われている内容は比較的平易で、高得点を獲得した受験生が多かったのではないだろうか。市販されている問題集の典型問題の内容の定着を万全にして、完成度を高めていけば高得点を取れる内容の出題が続いている。
本学は論述問題を毎年必ず出題している。今年度は60字以内の論述問題が出題され、昨年度は80字以内の論述問題が出題された。他の国立大学医学部入試と比べると、字数の多い論述問題が出題されている。論述問題の主な内容は、現象についての理由を問うものである。日頃から現象や化学用語を書いて、正確に説明できるようにする練習が必要である。また、実験器具の名称や使用目的も教科書や資料集を使って覚えておく必要がある。