おかあさんの参考書
男女別学教育を考える

男女別学教育を考える

鳥居りんこ

中学受験のメリットのひとつに「学校を選べる」ということがあります。特に私立の中高一貫校は、学校によって校風やカリキュラムがさまざま。その中から、わが子の個性や特徴に合う学び舎を選択できるのは大きな魅力です。
人間も環境によって影響を受ける生き物ですから、わが子の環境を整えてあげたいと考えるのは、親としては自然なこと。「空前の中学受験ブーム」と呼ばれる理由は、実はこれが一番、大きいのかもしれません。

けれども、一口に「学校選び」と言いますが、親にとっては本当に難しく、悩ましいものです。親とはいえ、子どもとは別人格。しかも、その肝心な子どもはまだ小学生なのですから、その子の未来に大きく関わってくる学校を、親の責任で選ばざるを得ない事実は重いですよね。
そこで、今回はご参考までに「別学校」という視点から、学校選びを考えてみたいと思います。

共学人気は続く見込み

中高一貫校は国立・公立・私立を合わせ、全国に約600校。その内、約200校が都内に存在しています。「大学付属校か進学校か」などといった具合に、さまざまな分け方がありますが、中でも、男子校・女子校・共学校という区分けは外せません。当然ながら、男子の女子校受験は不可能ですし、その逆もまたしかりです。
「わが子は共学校向きか」、はたまた「別学校向きか」も悩むポイントになります。

近年は共学校が人気ではありますが、その理由は主に下記の2つです。

1つは主に親側の考えで、「学校は社会の縮図であるべき。だから共学のほうがいい」という「男女平等」という社会的意識の高まりのためです。

もう1つは学校側の事情です。近年では少子化の影響を受け、経営面を重んじる別学の私立中高一貫校が次々に共学化したという経緯があります。

特に、国際教育を重視する形で、別学から共学にリニューアルした学校は人気が急上昇。中でも、渋谷教育学園渋谷(1996年/旧:渋谷女子)や広尾学園(2007年/旧:順心女子)は今や最難関校に位置するほどです。

現在は、この2校に追いつけ、追い越せ!とばかりに「共学化ブーム」が旋風のように巻き起こっている状況です。
最近では、広尾学園小石川(2021年/旧:村田女子)、サレジアン国際学園(2022年/旧:星美学園)、サレジアン国際学園世田谷(2023年/旧:目黒星美)、芝国際(2023年/旧:東京女子学園)などが開校しましたが、いずれも大人気校となっています。

さらに、2024年に蒲田女子を共学化し、名称を改める羽田国際が2025年に開校予定。男子校の日本学園も2026年から明治大学の系列校となり、明治大学附属世田谷として共学化されます。
リニューアル校は中学受験保護者から熱い注目を浴びており、今後も共学人気は続くと見られています。

男女別学の最大のメリットは

では、今の時代、別学校での学びはデメリットが大きいと考えたほうがよいのでしょうか。

答えは「人による」ということに尽きるのですが、私見で申し上げますと、「別学」も捨てがたいと思っております。

別学校には別学校ならではの、そこでしか味わえないよさがあるからです。

思春期のほとんどを過ごすことになる中学・高校時代。たった6年間ではあるのですが、この6年で子どもたちの心と体は驚くほどの成長を遂げます。
親にとっては、わが子が本当に扱いにくい時代に突入するのですが、別学校のよさは、ズバリ、先生方が「性差による成長曲線」を熟知されているということです。

男女が平等であるのは当然ですが、一方で、性差で成長曲線が異なるということも、また事実です。中1、中2では女子のほうが精神的成長が早いので、男子は女子にイニシアティブを取られがちになります。しかし、高校2、3年生あたりになると、今度は逆に男子が目覚ましい成長を遂げていく、というようなことです。

別学校は伝統校であることがほとんどなので、100年越えの学校も少なくありません。私学は先生の異動が少ないという背景もあるので、それぞれの成長曲線に応じた「プロの技」が連綿と受け継がれているわけです。

例えば、数学の授業で1から10まで教えることがあるとしましょう。男子校では単元の7くらいまで教えると、「みなまで言うな!」とばかりに、自分たちで考えたがる面があるのだそうです。
逆に女子校では、最後まできちんと教えてほしいという要望が見られるようです。教師もそれに応えて、誰ひとり置いていかないことを意識しながら、丁寧に講義をするとおっしゃる先生が多いです。

要するに、女子には女子に適した教育があり、男子には男子に適した教育があるということが経験として根づいているのです。学校全体でゆったりと、学年に応じた成長を促していくことが、別学校の最大のメリットではないかと感じています。

共学か別学か? 考えるヒント

思春期は自分の生き方を模索する時期です。別学校では異性の目を気にすることがありませんので、自分が好きなこと、得意なこと、やってみたいことなどを本音で吐露できる機会に多く恵まれるでしょう。

男子と女子との交流がないために、将来のコミュニケーションスキルに課題を残すというデメリットを挙げる方もおられます。しかし、現実問題、別学校でも学校間行事や習いごと、塾や予備校などで異性と接する機会は意外とあることはつけ加えておきたいと思います。

わが子に合ったよりよい選択をするためには、男女共学と別学のメリット・デメリットを認識することが必要です。学校見学の際には、なぜ男女が一緒なのか、なぜ男女は別なのかという視点からも、それぞれの学校の教育方針をチェックしてみてください。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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