おかあさんの参考書
総合型選抜入試(旧AO入試)には中高一貫校が有利かを考える

総合型選抜入試(旧AO入試)には中高一貫校が有利かを考える

鳥居りんこ

長年、多くのお母様方からの受験についてのお悩み相談に接していますが、ここ最近では、その内容に広がりがあるのを感じます。
たとえば、お子さんの年齢。以前ですと小学校低学年あたりで「中学受験をしたほうが良いでしょうか?」といったザックリとしたご相談が多かったのですが、今は就学前のお子さんがおられるお母様からの「大学受験」に関するピンポイントのご質問も増えているのが現状です。

先日、寄せられたお便りには「子どもは今、幼稚園に通っていますが、総合型選抜入試には、やはり私立中高一貫校のほうが有利でしょうか?」とありました。

お子さんが園児であることに少しビックリはしましたが、この方がとりわけ教育熱心というわけでもなさそうです。
私の周りにいる就学前のお子さんがいるママたちに聞いても、ママ友同士の会話に小学校受験から大学受験に至るまでの「受験ネタ」は普通に出てくるトピックなのだとか。
その中でも、最終学歴にあたる「大学への道」についての話題は、どの世代の親御さんにとっても共通の関心事なのでしょう。

その関心を受けまして、今年の1月の拙コラムでも「大学入試から、未来を予想してみる」を綴りましたが、今現在の大学入試は一昔前とは様変わりしている状況です。

総合型選抜入試には長期的戦略を

保護者世代の多くが体験した「一般選抜」という入試比率はドンドンと縮小。今や、私立大学では約6割の学生が「総合型選抜(昔のAO入試のこと)」や「学校推薦型選抜」と呼ばれる入試方法で入学してくる時代です。これらは、年明けから実施される一般選抜とは違い、年内に合否が決定するため「年内入試」と呼ばれています(共通テストを課すタイプの総合型選抜入試の合格発表は2月以降になります)。

この「年内入試」の広まりは、文科省が行なっている教育改革によるものが大きいです。
わが国では、「一昔前までの知識偏重型のいわゆる暗記教育では世界とは戦えない」という猛烈な危機感のもと、欧米の大学入試を参考にした選抜方法を国主導で推し進めている最中なのです。
何を重視しているかと言えば「論理的に考える力」「表現力」といった能力です。

大学は学問や研究を行なう場所なので、「大学に入ったら遊びます」という学生は不要。
未知なる現象を自分なりに考え、解決策を模索する学生にのみ入学を許可するという選抜方法ですので、「志望理由書」「課題レポート」などの提出書類や面接が重視されます。
当然、その学問を専門とする教授陣に、どういう問題意識を持って、どんな研究をしたいのかをアピールできなければ合格はありません。

つまり、上位大学になればなるほど、一朝一夕の付け焼刃ではこの入試は突破できない、ということになります。
高校で部活引退をしてから受験勉強をすれば間に合うという類の入試方法ではないので、自分は何に興味があり、何を学びたいのかをハッキリさせた上での受験対策は必至。どちらかと言えば、長期的戦略が必要です。

このため、総合型選抜入試は「アピール入試」とも「相性の入試」とも呼ばれています。大学名ではなく、その学部・学科の求める人物像と受験生本人のマッチ度が重要だからです。

「早稲田ならどの学部でもいい」という旧来ありがちだった考え方は通用せず、大学の学部のことをしっかりと調べて志望する必要があり、さらに、その上で今までの自分自身の経験とやる気の本気度を大学側にプレゼンしていく入試と考えると分かりやすいかもしれません。

一方で、中堅大学未満の年内入試の多くは、一般入試のように学力を厳しく問うものではないという現実もあります。そういう大学の中には、中高の単元の学び直し支援を大学側が行なっている場合があり、問題視されてもいますので、大学によって難易度に相当なる幅があるのも事実です。入りやすい大学と入りにくい大学が混在し、その差はますます広がっているというイメージでしょうか。

こういう現状はあるにせよ、教育改革だけではなく、少子化という確定要素を受け、年内入試主流化の傾向はこれからも続くと見られています。

さらに、難関大学を中心に一般入試の定員を絞っている関係上、一般入試の合格者は超進学校出身者の比率がますます高まると予想されています。
つまり、超一流大学に入るには、より前広な戦略が必要になってくるというわけです。

わが子の学びの問い「なぜ?」「どうすれば?」を大切に

冒頭の「年内入試に私立中高一貫校は有利か否か」というご質問に戻りますと、答えは現段階では有利とも不利とも言えず、学校によるし、志望大学・学部によるという答えが妥当のように思っています。

総合型選抜入試に対応したプログラムを組んでいる学校もないわけではありませんが、今の時点では、従来型の受験対策(高2までに高校の範囲の学習を終了させ、高3は大学受験のための演習を行なうというカリキュラム)が一般的だからです。
超進学校と呼ばれる高校では、まだまだ主流は一般入試なのですが、これも徐々に変わっていくかもしれません。
良い悪いは別として、このように大学受験のシステムは目まぐるしく変化している状況です。今後の推移は分かりませんが、確実に言えるのは一般入試・年内入試共に「暗記詰め込み」でどうにかなる時代は終わったということです。
国は、若者に必要な力を「学力の3要素」として定義しています。今後は、知識をつけた上で、自分で考え判断し、主体性を持って多様な人々と協働できる力が求められているのです。

これからは、日々の子育ての中で、この力をどう家庭で育んでいくのかを心に留めておくことが、ますます大切になってくるでしょう。
そのためには、まずはお子さんの「なぜ?」「どうして?」「どうすれば?」といった学びの問いを大事にすることが、その第一歩になるように思っています。

忙しい毎日の中では、その時間を取ることも大変だとはお察ししますが、時には手を止めて、お子さんと一緒に「なんでだろうね?」「どう思う?」「一緒に考えようか?」という親子の会話を楽しんでください。
その何気ない積み重ねの日々が、お子さんの知的好奇心を育てる一助になっていくでしょう。
ご参考になれば幸いです。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

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