


高大連携を考える
どの世界にも“トレンド”がありますが、教育業界にもそれがあります。
近年では「高大連携」が流行中です。今では文字通り「高校と大学が連携して教育を行う」という意味なのですが、もともとは大学附属の高校で主に行われているシステムでした。ところが最近では、附属校以外の高校でも積極的に取り入れられており、とくに私立中高一貫校でその動きが顕著です。複数の大学と協定を結んでいる中高一貫校も増えてきました。
どんな連携が行われているか
「高大連携」では具体的にどんなことが行われているのでしょうか。
協定大学の教授などが、直接、高校(または中学)に出向いて出張講義を行ったり、また、高校生が実際に大学のキャンパスで授業を受けたりするケースがあります。
このメリットは、大学レベルの授業を受けることが、高校生にとってインパクトのある貴重な体験になることです。
大学教授の講義内容に影響を受ける生徒もいるでしょうし、分野における最先端の研究を垣間見ることで、興味が深まることもあるでしょう。
実際に高校の先生方から、「出張講義をきっかけに進路を決めた生徒は少なくない」という話をお聞きします。
また、ある私立高校の生徒は、同じ協定校である他校の生徒や大学の学生とともに企業主催の高大連携分科会に参加。総合的な学習の取り組みを、たがいに発表するなどしています。この取り組みには、他校の生徒や大学生と実際に競い合うことで、生徒を刺激しようという狙いがあるようです。
その高校の先生が、「大学の先にある企業という実社会に目を向ける経験が、高校生の心に火を点ける」とおっしゃったことが印象に残っています。
このように、大学だけではなく、さまざまな企業を巻き込んだ広義の学習を行っている学校も多々あります。
地に足の着いた進路選択につながる
高校内では入試担当の先生による大学説明会が開かれ、大学側の招待で大学訪問という形のツアーが実施されることもあります。
それぞれの学部学科で何を学べるのか、また、大学での学びが卒業後の就職にどう繋がっていくのかを早い段階で知る機会が得られるのも高大連携の利点です。大学受験前に自分に合った進路を深く考えられることが、進路選択の大きな助けになることは間違いありません。
大学受験では、「有名大学だから」、または「合格できそうだから」というだけの理由でなんとなく選んでしまい、入ってから想像と違って後悔するというミスマッチが発生しがちです。大学教育においては、興味がないまま学びを続けるのは苦痛ですので、せっかく入学したのにやる気をなくしてしまうという残念なケースも後を絶ちません。
こうなると、学費を捻出している親にとってもダメージが大きいうえに、大学生活に夢と希望を抱いていた本人には何よりもつらいことでしょう。
しかし、事前に大学の講義を聴き、学科研究をすることができれば、具体的に何を学ぶのかをより深く理解することができます。また、高校生のうちに、自分は何を学び、どう生きたいかという大きな問いと向き合う時間が得られるのです。これにより、おのずとミスマッチの悲劇を回避できる可能性が高くなります。
高校生、高校、大学の三方にメリット
さらに、高大連携はたいてい指定校推薦枠とセットになっているので、進学実績を確保したい高校側にとっても好都合です。また、現在は早慶を中心とした有名私立大学の難化が進んでいるため、合格が保証される推薦枠の広がりは、在校生としても歓迎でしょう。
もし、希望の学部学科の推薦枠があるならば、一般受験も含めたチャンスが増えるということです。
一方で、大学側にもメリットがあります。
ご承知のように、少子化のため高校生の数は年々少なくなっています。今後ますます大学側も思うように受験生を確保しにくくなるという現実があります。
そのため、大学側には「高大連携」を深めて、確実に入学してもらいたいという思惑があるのです。
要するに、「高大連携」は大学、高校、そして高校生すべてにメリットをもたらすということです。高大連携が爆発的に増えている背景には、このような事情があります。
継続した学びは将来設計にプラス
かつての大学は、入ることに一生懸命で、入ってしまえば就活までは“遊びの時間”ということもなきにしもあらずでした。けれども、本来は、高校と大学の間も学習が継続されるべきなのはいうまでもありません。
高校や大学が手を取り合って入学前教育を充実させることは、生徒に学びへの期待をもたらし、自身の将来設計を真剣に考えるのに役立つでしょう。
お話ししてきた通り、大学との連携にはいろいろな取り組みがあります。各学校によって協定大学もさまざまで、それぞれに特色があります。
中学受験で学校選びをする際には、高大連携についても意識されると、志望校の幅が増えてきます。ぜひ、この方面についてもチェックしてみてください。
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